1歳や2歳の子どもたちは、まだ言葉が未発達であるため、クラスのお友達とのコミュニケーションがうまくできないことがあります。
「おもちゃを貸して」「ぼくのだよ、おもちゃをとらないで」などといったやりとりは、年長児であれば円滑にできるかもしれません。しかし、2歳前後の子どもたちには、まだまだ難しいことなのです。(もちろん、発達の個人差によって苦手なことは変わってきます。)
自分の気持ちが相手にうまく伝わらない欲求不満のために、相手のことを叩いてしまったりおもちゃを投げたりする姿は、この年齢では決して珍しいことではありません。相手が大人であれば自分の気持ちをうまく察してくれるかもしれませんが、子ども同士ではそういったやり取りが成立しません。“かみつき”は、そういう理由から起こります。
かみつきを起こさないための3つの工夫
⒈十分なスペースのある環境づくり
1〜2歳児のクラス担任をしてみると、かみつきは環境設定によっても引き起こされることがあると分かりました。狭い場所で複数の子どもたちがぎゅうぎゅうになりながら積み木をしていると、情緒が不安定になりトラブルが発生します。大人が満員電車に乗ってイライラする気持ちと同じです。
子ども同士のトラブルは心の成長にとって大切なことですが、環境によって引き起こされるトラブルは安全を守る意味でも、できる限り未然に防ぎたいものです。遊びのスペースはなるべく広めに取り、子どもたちが自由に動けるような配慮をしましょう。また、おもちゃが少ないことによって1か所に子どもが集まってしまうことも考えられます。用意するおもちゃの種類や量、置く場所も、かみつきを防ぐために考えなくてはいけないことです。
⒉子どもたちの心が穏やかになる保育の小道具
かみつきのトラブルは、子どもたちが興奮状態の時に起こる可能性が高まります。例えばクラスの中に大きな声で泣いている子がいると、他の子にも不安な気持ちが伝染するものです。泣いている子に寄り添ってケアをすることも大切ですが、クラス全体の子どもたちが落ち着くような手立てを考えることによって、かみつきなど怪我に繋がるトラブルを防ぐことができます。
例えば、大型絵本やペープサート、クラスで人気の手遊びなどを用いて、子どもたちが気持ちを切り替えて落ち着けるような工夫をしてみましょう。私がよくやっていたのは、ヒソヒソ話のように手遊びをしたり、絵本を読むことです。先生が小さな声でお話を始めると、子どもたちも耳を傾けてくれるため、興奮していた気持ちが次第に穏やかになります。
⒊子ども同士のやり取りをしっかりと見守ること
かみつきを防止するために最も大切なことは、保育者が子どもたちのやり取りをしっかりと見守り、必要に応じて間に入ることです。まだ言葉のやり取りが未発達な子どもたちに代わり、保育者が「おもちゃを取られて嫌だったんだよね」「おもちゃを貸してほしいって言いたかったんだよね」などと気持ちを代弁し、やりとりのサポートを行います。
子どもたちへの理解が深まるにつれて「AちゃんとBくんはトラブルになりやすいな」とか「Cちゃんは言葉で気持ちを伝えるのが苦手な子だな」と予測し、適切な環境設定を考えたり、保育者がどの場所にいるのが適切かを判断できるようになります。
かみつきが起こった後の心のケア
お友達にかみついてしまった子、かみつかれてしまった子の双方に寄り添い、決して「かみついた側」を悪者にしてはいけません。どんなやり取りがあり、どんな理由でかみついてしまったのか、その時どんな気持ちだったのかを考え、「おもちゃを取られたから怒っちゃったんだね」と気持ちに寄り添うことが大切です。「そういう時は○○って言えばいいんだよ」と、言葉でのコミュニケーション方法を繰り返し伝えていくことにより、かみついたり叩いたりしなくても伝えられる方法があることを学んでいきます。
子どもたちの姿を追っていると、トラブルが起こったことやマナーを守らなかったことなどマイナス面ばかりに目がいってしまう場合があります。しかし、子どもたちの小さな成長(声に出して「貸して」が言えたこと、自分の気持ちを言葉で表現し伝えられたことなど)を見逃さず、必ず褒めてあげるようにしたいですね。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |
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