食べることが好きな子もいれば苦手な子もいます。食事に対して苦手意識を持っている子にとって、給食やおやつの時間はあまり楽しいものではないかもしれませんね。個人差を意識しながら、食べることが楽しくなるような言葉掛けを行なっていきましょう。
ここでは、実際に保育現場で活躍中の先生たちのアイデアをもとに言葉掛けの例を紹介します。
「先生も一口だけチャレンジしてみたよ」・スプーン半分から挑戦
苦手な食べ物がある子の隣で、先生も自分の給食を一口だけ食べて見せ、子どもと同じ目線になります。「みんないっぱい食べてるよ」とか「半分は食べようね」というアプローチは、その子にとってプレッシャーになってしまうことも。まずはスプーン半分くらいから、味見をするような感覚で食べるように提案してみるのはいかがでしょうか。
また、たくさん食べてほしい一心で、「もう一口食べられる?」とさらに促すと嘘をつかれたと感じる子もいるでしょう。
「手で触ってみる?」・まずは興味を持つことが大切
特に低年齢の子どもたちにとって、食べ慣れない食材が献立に入っているのは未知との遭遇。食感や味に驚いて口から出してしまう子もいるでしょう。そんな時に食べることを無理強いするのはよくありません。「手で触ってみる?」と、その食材を触ってみることを促す手立てもおすすめです。苦手な豆腐をしばらく指でいじった後に、試しにパクっと食べた1歳の子もいましたよ。
「どんな味がするか知りたいな。教えてくれる?」・感想を伝えることを楽しむ
味を先生に教えてくれるかな?と伝えることで意欲が湧いてくる子もいます。口に入れたくなかったら、ぺろっと舐めてみるだけでもOK。食べることに苦手意識を持っている年長クラスの子にこのアプローチをしてみると、他の子も面白がって「僕が教えてあげるよ」と真似てきました。子どもから出てきた感想が「まずい」とか「もうやだ」などネガティブなものであっても否定せずに挑戦した姿を認めて褒めることが大切です。
「食べ終わったら●●が待ってるよ」・次の出来事に期待感が持てるようにする
たとえば、食事のあとに大好きな遊びが待っていることなどを伝え、先の楽しみを目標にして食べられるようにします。食事に集中できない子であっても、こうしたアプローチをすることで、食べる時間と遊ぶ時間のメリハリをつけることができます。時計が理解できる子であれば、「●時になったら●●をしようね」と伝え、食事が終わる時間をあらかじめ決めてしまうのも良いかもしれませんね。完食するまでずっとその場にい続けるのは大人だって苦痛なものです。
「頑張って」や「美味しいよ」という言葉掛けを見直そう
食べるのが大好きで「美味しい」とモリモリ食べる子の姿を見ると、みんなもそうであってほしいと思ってしまうかもしれませんが、食べたい量や食べるペースは一人ひとり違いますし、食べること自体が苦手な子もいます。
つい使ってしまいがちな「頑張って」という励ましの言葉や、「美味しいよ」という食べることを促す言葉。頑張ってたくさん食べることや、食べたものに対して美味しいと感じることが必ずしも正解ではありません。
一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、適切な言葉掛けを選んでいけると良いですね。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |