保育現場に不審者が侵入した、または侵入される手前で取り押さえた、といったニュースを耳にすることがあります。そういった恐ろしいニュースを見聞きし、「もしも自分の働く園に不審者が来たらどうしよう……」と想像した方もいるのではないでしょうか。
保育現場において、日頃から不審者を想定した対策をしておくことは子どもと大人、その場にいる全員の命を守るためにも大切です。
今回は、保育現場の不審者対策の事例やポイントについて紹介します。
想定される不審者のケース
不審者と一口にいっても、以下のようにさまざまなケースが想定されます。
- 危険物(刃物、薬物等)を持って侵入
- 園の門の前をウロウロして中を覗こうとしている
- 散歩中に不審者に声を掛けられた
- 夜間帯を狙って窓を割り侵入(空き巣)
- 園児の連れ去り目的で業者を装い来訪
このように、時間帯や手口はさまざまです。散歩中や職員の少ない夜間帯に不審者に遭遇する可能性もゼロではありません。どのような備えをすれば、みんなの安全を守ることができるでしょうか。
保育現場の不審者対策の事例
ここからは、実際に保育現場でどのような対策が行われているのかを紹介します。
地域と連携を図り防犯強化
近隣の小学校や子育て支援センター、児童館、商業施設、交番などと連携を図り、不審者情報を共有したり、さまざまなケースを想定して合同で避難訓練を実施している園もあります。
気になることがあればすぐに交番に相談できるように日頃からコミュニケーションを取ることも大切です。散歩中に不審者に遭遇した場合は、近隣施設に逃げ込めるように事前に協力を要請しておくとよいでしょう。
不審者対応訓練の実施
園に不審者が侵入したことを想定し、保育時間中に訓練を実施している園も多いです。不審者がどこから侵入したかによって、避難ルートや避難場所を変える必要があります。安全な場所に子どもたちを誘導して施錠すること、さすまたや消化器を使用して不審者を遠ざけること、通報の仕方など、非常の動きを認識・実践します。また、保護者にも訓練について事前告知し、当日は連絡ツール等を用いて情報共有を行います。
施錠、開錠の共通ルールをつくる
多くの園では門扉や玄関にオートロック機能を採用しており、外から勝手に入ることはできません。その場合、保護者は出入りの際に開錠番号を入力したりカードキーをかざしたりして子どもの送迎をするのが一般的です。業者など外部からの来訪者があった場合は、モニターカメラで必ず顔を確認し名前や用件をしっかりと確認してから開錠するようにします。このように開錠のルールを設け職員間で共通認識を持つことが大切です。
インカムの導入
職員全員がインカムを装着することで、非常事態の際も素早く連携を図ることができます。不審者対策以外にも、保育中にその場を離れられないときなどはインカムが便利です。近年、試験的に導入して保育に活かそうとしている園が増えているようです。
不審者対は色々な視点で考えてみることが大切
不審者対策を行い訓練を実施したからといって「100%安心」ということではありません。複数の大人たちの視点をもって、意見を出し合いながら常に防犯性を強化していく必要があります。中には、訓練の際に警察官を招きアドバイスをもらったという園もあります。防犯のプロの視点が加わると、よりよい対策ができるかもしれませんね。
どんな対策ができるか、ぜひ職員間で話し合ってみてください。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |