めぐみ先生の保育コラム

保護者に寄り添う支援について考えよう

保護者支援は保育者の役割の一つです。その上で、保護者の気持ちに寄り添って関わることが大切とされています。

 

ここでは、「保護者に寄り添う支援」について具体的に解説していきます。

 

保護者が傷つく伝え方ってどんなの?

保育者がよかれと思って伝えたことでも、保護者を傷つけてしまう可能性があります。以下のような伝え方には十分に配慮しましょう。

 

・決めつけた言い方

「Aちゃんはダンスが嫌いですもんね」や、「落ち着かない原因はテレビを見せすぎていることです」など、決めつけた言い方は相手の自尊心を傷つけ、信頼関係を損なう大きな要因となり得ます。

 

・園で困っていることをピンポイントで伝える

「Aくんが朝の会で立ち歩いてしまい、みんなが集中できずに困っています」といったように、園の困り感を全面に押し出して伝えることは、保護者に強い不安感を与えかねません。

 

・指導的な言い方

助言の仕方にも注意が必要です。「21時には必ず布団に入るようにしてください」「お子さんの前でイライラした態度を見せてはダメです」など、指導的な言い方が保護者を追い詰めることがあります。

 

保護者に寄り添う支援のポイント

それでは、具体的にどのように行動すれば、保護者の気持ちに寄り添えるのでしょうか。

 

・保護者のバックグラウンドに目を向ける

保護者のバックグラウンドは一人ひとり異なります。

例えば、同じサービス業のママKさんと、Jさん。

 

Kさんは義実家の近くに住んでおり、夕飯はいつも祖母がつくってくれます。土日は三世代で旅行に出掛けることが多いようですが、実は最近は、実家との近居にストレスを感じているようです。

 

一方、Jさんは実家が遠く、パパは消防士のため夜間や土日も出勤します。子どもを寝かしつけるのが毎日遅く、朝もクラスの活動開始後に登園してくることが多々あります。

 

職業も子どもの年齢も家族構成も同じ。しかし、バックグラウンドはかなり違います。この背景を知っているかどうかによって、ママたちにかける言葉は変わってくるはずです。

 

・共通認識がもてるように情報の伝え方を工夫する

保育者と保護者が同じ目線になり共通認識をもって子どもと向き合うことは大切なことです。そのためには、園での支援や保育者の意図を具体的に伝える必要があります。

 

例えば、トイレで失敗することが多く、排泄やオムツの着脱に苦手意識をもっているSちゃん。担任は彼女が少しでも前向きな気持ちになれるように、オムツに大好きなキャラクターを描きました。ここから徐々にトレーニングパンツへの以降をと担任は考えていましたが、保護者は「先生がオムツに絵を描くからパンツに移行しにくくなった」と感じているようです。

 

こういった認識の齟齬が発生したのは、援助の意図や今後のステップについて担任が保護者と十分に認識を合わせられていなかったことが原因の一つです。

また、一方的に援助を進めるのではなく、「園ではこうしてみようと思いますが、どう思いますか」と保護者の意向を確認することも大切です。

 

・保護者の苦労や努力を認め、労いの言葉を掛ける

荷物の準備や送迎、園への連絡など、園側にとっては当たり前のことでも、保護者によってはとても大変なことかもしれません。保育者が保護者の日々の苦労や努力を認め、労いの言葉を掛けることは、信頼関係を深めるきっかけにもなります。

 

「お母さん、最近お迎えが遅いですね。できればもう少し早めにお願いしたいです」と伝えるのと「お母さん、最近お仕事頑張っていらっしゃいますね。毎日休めていますか?もしもお迎え時間など大変なことがあれば、なんでもご相談いいただきたいです」と言葉を掛けるのでは、だいぶ印象が変わると思います。

 

保護者と信頼関係を築き、いざというときに相談してもらえる保育者を目指そう

保護者に何かを伝えたり、お願いしたりするときは、「子どものためには」という視点をもつことで、目線を合わせやすくなります。やろうとしていることが、子どもの成長にどう繋がっていくのか、また、子ども本人の気持ちは、など、子どもを真ん中に置くことで保育者・保護者がタッグを組みやすくなるのです。

 

「普段の保護者への関わり、大丈夫かな?」と思うことがあれば、ぜひ職員間で話し合ってみるのはいかがでしょうか。

 

佐藤愛美(さとうめぐみ)

保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。

保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。

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