ねないこだれだ
こんな時間におきてるのだれだ?
ふくろうにどらねこにどろぼう……。
そうら、もうおばけの時間なのに――。
↑福音館公式サイトより抜粋
-―――――――――― 以下、筆者の感想 ―――――――――――-
記念すべき初回にご紹介しますは、福音館書店より出版されております
せな けいこ作・絵の名作絵本『ねないこだれだ』。
出版日は1969年11月。
筆者である私よりも余裕で年上でございます。
子どものころに読んだことがあるかたも
結構いらっしゃるのではないでしょうか。
こちらの絵本ですが、ネタバレふくめあらすじをざっくりと
説明をいたしますと、
「夜更かしをしていた子どもがおばけに連れ去られる様子を描いた話」
となっております。
ええそうです。いわゆるバッドエンドというヤツです。
……怖。
私は幼少期に幸い? この絵本には出会っていなかったのですが、
もしも出会っていたとしたら、臆病な私は毎日夜にサーッとふとんに
飛び込んでいたことでしょう。
いやまぁ、だって、怖いですもんねぇ。
夜遅くまで起きてたらおばけにさらわれるんですよ?
はやくねましょう。ぎょろり。
さてさて、「ハッピーエンド」が主流の絵本業界のなかでも異彩を放つ
『ねないこだれだ』でございますが。
こちらの絵本、私としては
子どもとの絆を深める「読み聞かせの絵本」として、
完成度が非常に高いものだと思っております。
なぜなら
①「読み聞かせのキッカケ」
②「お母さん(お父さん)と一緒に寝るキッカケ」
が極めて自然な流れで出来上がってしまうからです。
どういうことかなるべく分かりやすく説明いたしますね。
―――――
子どもというのは好奇心が強く、
それゆえに怖い話が大好きな子も多いです。
「おばけ」が題材となった絵本というのは
「ちょっと怖くて一人じゃ見れないけど内容が気になるからお母さん
(お父さん)に読んでもらう」
といった方程式が出来上がります。
「おばけ」が題材となった絵本を見つけると、子供は
「気になるけどちょっと怖いから一人じゃ見れない」
という気持ちになるでしょう。
そのため「お母さんに一緒に読んでもらおう」と強く願うはずです。
するとどうなるでしょう。
子どもは「お母さん、このご本読んでよ」とせがんでくるはずです。
……ハイ! 気づけば
①「読み聞かせのきっかけ」が出来上がっちゃいました。
パチパチパチ!
さぁそのままの流れでこの絵本を実際に読み聞かせてあげましょう。
(ここで面倒臭いとか思ってはいけません)
筆者である私としてはなるべく優しい声のトーンで読み聞かせてあげる
とすごいイイと思います。
「夜更かししているとおばけに連れ去られる」というおそろしい内容に
子どもは怖がりながらも、お母さんがそばで読んでくれているおかげで
安心して『ねないこだれだ』の世界に入りこめます。
さて、その世界から帰ってきた子どもはどうなるでしょう?
某大手通販サイトAMAZ●Nのカスタマーレビューでは、
「絵本を読んだ子どもが、夜9時にはまっすぐ寝床につくようになった」
「読み聞かせたその日はイイ子で寝てくれる」といった旨の感想が多く
見受けられます。
この『ねないこだれだ』、子供のねかしつけになかなかの
効能があるみたいです。
おそらく子どもは「夜遅くまで起きているとおばけにさらわれるかも」
といった不安感を持つのでしょう。
すると今度はどうなりますか?
子どもは「お母さん、早く一緒に寝ようよ」とせがんでくるはずです。
……ハイ! いつの間にか
②「お母さんと一緒に寝るキッカケ」が出来上がっちゃいました。
パチパチパチ!
さぁそのまま一緒にふとんに入ってあげましょう。
(たとえ眠くなかろうが面倒くさがらず添い寝してあげましょう。)
子どもはさっき読んだ『ねないこだれだ』の怖い内容を思い出しつつ、
すぐそばにいるお母さんのおかげで安心して
眠りにつくことができます。
―――――
さて、いかがでしたか。
このように『ねないこだれだ』は、
① 「読み聞かせのキッカケ」
② 「お母さん(お父さん)と一緒に寝るキッカケ」
がスムーズに出来上がる絵本となっているのです。
子どもとの絆が「読み聞かせ」によってはもちろんですが、
「一緒に寝る」ことによって、より一層深まります。
しかも、「怖い体験から守ってくれている」という思いがあるので、
他の絵本を「読み聞かせ」「一緒に寝る」よりもさらに絆が深まること
うけあいです。
まさに子どもとの絆を深める「読み聞かせの絵本」として
究極の完成度を誇っているといっても
過言ではないのです。
熱帯夜で寝られない日にもぴったりのこちらの絵本。
本屋で見かけましたらぜひ手に取ってご覧くださいませ。
著:黄鳥あづき