春から保育の仕事を始めた方にとっては、働き始めてそろそろ一ヶ月が経つ頃ですね。先日、保育士1年目の方から「まだ保育の仕事を始めたばかりで、先輩にどこまで質問して良いのか分からない……」という悩みを聞きました。
保育園は命を預かる場所なので、慎重に対応したい場面も数多くあると思います。今回は、私の新人時代の経験をもとに、先輩との関わり方についてお話したいと思います。
新人時代は何でも質問して大丈夫!
掃除用具の扱い方から保護者への言葉掛けの仕方まで、分からないことは何でも先輩に質問して良いと思います。保育中に聞きづらい場合は、分からないことをメモしておき、その日の終わりにまとめて質問しましょう。(メモに夢中になってしまい保育が疎かになってしまわないように注意)
大切なことは、一度自分の頭で考えてから質問することと、同じ質問を何度もしないように努力することです。
「私はこんなふうにやろうと思っていますが、どう思いますか」と、自分の考えをもとに相談することで、実力の向上に繋がっていきます。
私は先輩に「正解や不正解はないから、何でも提案してみてね」と言ってもらえたおかげで、新人時代に色々な保育に挑戦することができました。
保育を行う上で、情報共有はとても大切
先輩に質問や相談をすることが大切な理由は、新人保育士が成長するためだけではありません。「おかしいな」「困ったな」をそのままにして保育を進行すると、最悪の場合、子どもたちの命に危険が及んだり、保護者とのトラブルが発生する可能性があります。
事例を一つご紹介しましょう。
2歳児クラスが公園で遊んでいる時に、Aちゃんが転んで怪我をしてしまいました。対応した新人保育士が傷口を水道水で流してあげると、Aちゃんは再び遊び始めました。新人保育士は、Aちゃんが元気なのでそのまま遊びを見守りました。
しかし、夕方のお迎えの時間にAちゃんの保護者が異変に気づきました。膝が真っ赤に腫れていたのです。どうやら転んだ時の傷口が深く、雑菌が入ってしまったようでした。先輩保育士は事態を知らなかったため、その場で状況をきちんと説明できず、後日Aちゃんの保護者に改めて謝罪をしました。
この事例では、新人保育士がAちゃんが転んだ時に独断で対応し、先輩にも情報共有をしませんでした。本来は、その場にいる保育者全員に伝え、みんなでAちゃんの様子を見守らなければいけません。特にまだ経験の浅い新人が応急処置を独断で行うのは危険です。怪我の度合いによっては園長や看護師にも確認してもらう必要があります。この一件では正しい処置が行われていなかったため、傷口が不衛生なまま長時間が経過してしまいました。
さらに、転んだ時のことを新人保育士しか把握していなかったため、保護者にきちんと説明ができず不信感を与える結果となってしまいました。
「Aちゃんが転んでしまいました。水道水で洗った後は、絆創膏を貼るべきですか?」「Aちゃんの怪我のことは、お迎えの時に口頭で伝えれば良いでしょうか」といったように、その場で先輩保育士に相談しておけば適切なアドバイスを得られます。そして、不要なトラブルや事態の深刻化を避けられるのです。
新人時代の失敗は、先輩になった時に役立つ
先輩保育士に相談しながら保育をしても、新人時代は失敗ばかりです。「何回も同じことを聞かないで!」「こないだも失敗したよね?」と言われ、落ち込むことも……。
しかし、新人時代に失敗した経験は、自分が先輩になった時に役立ちます。後輩の力を伸ばすためにどんなアドバイスをするか、どこまで任せたら良いのかを判断する基準になるからです。
新人時代の苦い経験は、すべて未来の財産になると言っても良いくらいだと思います。
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |
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