平成17年度 小児栄養
問1 平成12年(2000年)に当時の厚生省、農林水産省、文部省の三省共同により策定された「食生活指針」の記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 主食、主菜、汁物を基本に、食事のバランスを。
B ご飯などの穀類はほどほどに。
C 野菜、果物、牛乳、乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。
D 現在の体重を知り、日々の活動に見合った食事量を。
E 食文化や地域の産物を生かし、ときには新しい料理も。
A B C D E
1 ○ × × × ○
2 ○ ○ ○ × ×
3 × × × ○ ○
4 × × ○ × ○
5 × ○ × ○ ×
問2 幼児期の栄養特性についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 幼児期の身体発育の重点が身長より体重にあり、生理的に太った乳児の体型が細身化し、単位体重当たりの摂取エネルギーは次第に低下していくため、成長にそった栄養のあり方を考える。
B 咀しゃく、消化吸収、代謝能力などは、個人差が小さく、未熟な時期であるが、成人に比して体内の新陳代謝は活発、旺盛である。
C 活発な日常生活を維持するために必要な栄養量のほか、発育に要する栄養量を考慮し蓄積する。
D 自制心に乏しく、食事についても質、量ともコントロールが困難で、食欲不振、過食、偏食などに陥りやすい時期である。
E 今までの食べさせてもらう食事から、自分で食べたがるといったような摂食行動の発達がみられスプーンなどを使用した食べ方が可能になるなど食事の自立が形成される時期であり、栄養生理面だけでなく調理形態や食べ方の適応などの面においても大きな変化をともなう時期である。
A B C D E
1 ○ ○ ○ × ×
2 ○ × ○ × ○
3 × ○ × ○ ○
4 ○ ○ × ○ ×
5 × × ○ ○ ○
問3 小児期の健康についての記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 日本人の健康管理は、小児期からの健診などにより病気の早期発見・早期治療による2次予防に力点が置かれている。
2 学校給食は、実際の食事という生きた教材をとおして、正しい食事のあり方や好ましい人間関係を体得するための教育活動として位置づけられている。
3 小児の生活時間の夜型への移行は、食生活のリズムを乱す原因の一つともなる。
4 よく食べ、よく遊び、十分な睡眠をとることは、それぞれ密接に関係しあっており、小児の健康の増進と順調な発育発達をうながす。
5 「健やか親子21」には、取り組むべき主要な課題として、思春期の保健対策の強化と健康教育の推進が設定されている。
問4 乳児の消化吸収機能についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせについて一つ選びなさい。
A 乳歯は6?9か月から生えはじめ、3歳ころまでに24本が生えそろう。
B 乳児の胃の形は円筒形で、噴門部の閉鎖が不十分なため、溢乳、吐乳を起こしやすい。
C 乳汁のカゼインは小腸において凝乳酵素レンニンの作用により凝固し、カードを生成する。
D 乳児の腸内細菌叢は、母乳栄養児ではビフィズス菌が優勢である。
E 乳児の腎臓の機能は成人より未熟であるため、水分摂取が不足すると不要な尿素や電解質の排泄に支障をきたす。
A B C D E
1 ○ × × × ×
2 × × ○ ○ ×
3 × ○ ○ ○ ○
4 × ○ × ○ ○
5 ○ × ○ × ×
問5 乳児期の栄養摂取の基本は「吸啜」であるが、その反射運動のうち「捕捉反射」の記述として適切な記述を一つ選びなさい。
1 乳首を強く吸う運動である。
2 乳首に唇が触れるとその方向に顔を向ける。
3 形のある食物を口に入れると、それを反射的に口の外に舌で押し出す。
4 口腔内にたまった乳汁を飲み込む運動である。
5 乳首が口に入ると、それを唇または舌でとらえる。
問6 三大栄養素についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 摂取された糖質はブドウ糖、果糖、ガラクトースなどの単糖類のかたちで吸収される。
B 摂取後すぐに利用されない糖質は肝臓や筋肉で、フルクトースや脂肪に変化してエネルギーの 貯蔵物質として貯えられる。
C 食物中の脂質の多くを占める中性脂肪の変化は、主に膵臓液中の脂肪分解酵素であるマルターゼの作用により、小腸で行われる。
D 糖質と比較して脂肪がエネルギーとなる代謝系は、ビタミンB1の要求量が少ないので、脂質の摂取はビタミンB1の節約になる。
E たんぱく質は糖質や脂質と異なり、炭素、水素、酸素のほかに、酵素を約16%含むことを特徴としている。
A B C D E
1 ○ × × ○ ×
2 × × ○ × ×
3 × ○ × × ○
4 × ○ × ○ ×
5 ○ × × × ○
問7 水分代謝についての記述である。( A )~( E )について、当てはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
体内の水分の約3分の2は( A )に存在し、生体内の化学反応の場と なる。残りの3分の1は( B )と細胞間液中に存在する。( C )の水分必要量は年齢が低いほど多く、乳児期には120?150mlが 必要とされる。乳児期に下痢や嘔吐などにより短時間に急激に水分が多量 に失われる場合には、脱水症に陥りやすいので水分補給に配慮する。脱水 症になると( D )、四肢冷感、( E )、痙攣などの症状が出現する。
A B C D E
1 腎臓内 肝臓 哺乳量1mlあたり 貧血 倦怠感
2 血管内 筋肉 消費エネルギー1kcalあたり 腹痛 低血糖
3 小腸内 腎臓 摂取エネルギー1kcalあたり 頭痛 脱力感
4 筋肉内 尿 身長1cmあたり 悪心 筋肉痛
5 細胞内 血液 体重1kgあたり 頻脈 血圧低下
問8 妊娠期の栄養・食生活についての記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 妊婦貧血では、鉄の多い食品、良質なたんぱく質、葉酸、ビタミンB1、ビタミンB12、銅 および鉄の吸収を促すビタミンCを多く含む食品を摂取することが望ましい。
B 妊娠後期に葉酸の摂取量が不足すると、二分脊椎など神経管閉鎖障害の発症リスクが上がる。
C 妊娠するとステロイドホルモンの増加により腸の蠕動運動が強まり、下痢を招きやすい。
D たばこに含まれているニコチンは血管を収縮させ、胎盤への血液を減少させ、胎児に十分な酸素や栄養が供給されにくくなる。
E つわりは通常、朝の空腹時にみられることが多いので、胃を空にしないように手軽に食べられるものを用意しておくとよい。
1 ACD 2 ADE 3 ABC 4 BDE 5 BCD
問9 母乳についての記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 母乳の優れている理由のひとつは、感染の防御効果が大きいことで、初乳には成熟乳に比べ多くの免疫物質が含まれている。
B 母乳に含まれているオリゴ糖は、腸内ビフィズス菌の増殖を促進し、腸管内をアルカリ性にして病原菌の繁殖を抑える。
C 冷凍母乳を解凍する時は、細菌汚染の心配があるので熱湯につけて解凍する。
D 母乳の1回の授乳時間は10?15分くらいが適当であり、はじめの5分間に全体の半量以上哺乳される。
E 母親の摂取した食物の抗原が母乳をとおして乳児に移行し、アレルギー疾患を発症することがある。
1 ABD 2 ACE 3 ADE 4 BCD 5 BCE
問10 母乳分泌と栄養・食生活についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 母乳の分泌には脳下垂体前葉のオキシトシンと後葉のプロラクチンというホルモンが関与する。
B 喫煙習慣のある母親は非喫煙の者に比べ、授乳開始初期から母乳分泌が少なく、ことに産後、日数が経過するに従ってその差は大きくなるといわれている。
C 授乳婦にアルコールを負荷すると、摂取後3時間から4時間以内にエタノールが母乳中に出現する。
D 分娩によって胎盤が体外に排泄されると、催乳ホルモンの分泌が高まり、母乳分泌が開始される。
E 出産後、母乳を与えることは、妊娠中に母体に蓄積した体脂肪の消費に役立つ。
A B C D E
1 ○ × ○ × ○
2 ○ × × ○ ○
3 ○ ○ ○ × ×
4 × ○ ○ ○ ×
5 × ○ × ○ ○
問11 人工乳栄養についての記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 育児用調製粉乳は、牛乳の脂肪のある部分を植物油で置き換え、脂肪酸組成を母乳に近似させてある。
B 育児用調製粉乳は、ほとんどがショ糖に置き換えられているので甘味がうすい。
C 育児用調製粉乳は、1983年食品衛生法施行規則改正時に、重金属である亜鉛と銅の添加が禁止された。
D 離乳期幼児期用粉乳(フォローアップミルク)の組成は、乳児用調製粉乳に比べ、一般にたんぱく質と無機質が多く、脂肪は少ない。
E 先天性代謝異常症に対する特殊ミルクは、たんぱく質・アミノ酸代謝異常、糖質代謝異常、有機酸代謝異常、電解質代謝異常、吸収障害などを対象として多種類のものがある。
1 ABE 2 ACD 3 ADE 4 BCD 5 BCE
問12 離乳食についての記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 離乳食は乳児の消化機能の発達段階に合わせた調理形態に仕上げる。はじめはドロドロ状に仕上げ、次第に舌でつぶすことができる軟らかさに、さらに歯ぐきでつぶしたり、かめる程度の固さに変えていく。
2 離乳食は味つけするにしてもできるだけ食品の持ち味を活かしたうす味にする。うすい塩味、甘みといわれるものはそれぞれ3%程度、10?20%程度のものである。
3 乳児は月齢が小さいほど味覚は未分化であるが、離乳中期から食品の選択や調理法をできるだけ幅広くしていろいろなものに慣らし、幼児期にみられる偏食を予防する。
4 離乳食は熱すぎず、また冷たすぎず、体温程度にして与える。極端に冷たいものでなければ、また量を過ごさなければ冷たいものを与えても差し支えない。
5 離乳食は調理に手数がかかりすぎて、母親の負担となることは好ましくない。家族の食事のうす味のもの、電子レンジ、フリージング、ベビーフードを上手に利用するなど工夫する。
問13 幼児期の食生活についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 幼児の間食は、食事で不足する栄養素や水分の補給に加えて、気分転換など心理的満足を与えることもその目的である。
B 幼児期は身体活動が活発になるため、全消費エネルギーに占める活動に要するエネルギー量の割合が増加する。
C 幼児期に食事やしつけを強要することは、情緒障害や自律神経の異常をきたす場合もある。
D 幼児期の食欲不振には、保護者の養育態度に問題がある心因性のものと、間食や食事の与え方、生活リズムや運動量などの不適切な生活環境によるものとがある。
E 5歳を過ぎると自我が芽生えて自己主張が強くなり、偏食などを生じる。
A B C D E
1 × ○ ○ × ○
2 ○ ○ ○ ○ ×
3 ○ × × × ×
4 × ○ ○ ○ ○
5 ○ × ○ ○ ×
問14 幼児の間食についての記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 幼児は胃が小さく、消化機能も未熟であるため、3度の食事だけでは必要な栄養量を満たすことはむずかしい。そのため、間食は食事の一部と考え、食事で不足する栄養素を補給する役割が大きい。
B 幼児にとって間食は食事よりも楽しみが大きく、食に対する興味や関心を高める場にすることができる。
C 間食の適量は1,2歳児では1日に摂取するエネルギーの20?25%、3?5歳では25?30%程度が望ましい。
D 幼児の間食は、活動量や食欲を考慮しながら、できるだけ時間を決めて与えることが望ましい。
E 現代の幼児の間食をみると、間食から摂取するたんぱく質が過剰傾向にある。
1 ABC 2 ABD 3 ACE 4 BDE 5 CDE
問15 学童期・思春期の生理、栄養についての記述である。適切な記述を一つ選びなさい。
1 思春期にみられる急速な成長の増加を第一発育急進期という。
2 男子の性的特徴の発現に重要なホルモンは、アドレナリンである。
3 神経性食欲不振症には、精神的疾患やうつ病などによる一時的な摂食低下によるやせも含まれる。
4 学童期の肥満は生活習慣病の誘発要因であるとともに、成人の肥満に移行することが多い。
5 学童期・思春期の高コレステロール血症は、体重が正常の児童と肥満児との間で発症頻度に差はみられない。
問16 障害をもつ小児の食事と食生活についての記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 障害のある小児のなかには、口からの摂取経験が少ないために、摂食時にどのように口腔・咽頭・喉頭部を動かすかの協調を学ぶことができないことがある。
2 摂食機能の障害の一つに、飲み込みが上手にできず、食べ物が気管に入ったりする誤嚥があるので、細心の注意を払った食事の介助が大切である。
3 知的障害がある小児は、満腹感に乏しく食べ過ぎる傾向をもつ場合があるので、ふだんの食生活で十分な注意が必要である。
4 重症心身障害児の摂食機能発達を導くためには、摂食機能に関する発達年齢は個人差が大きいので、暦年齢を基準にした調理形態や食品選択が重要である。
5 重症心身障害児は腹筋の発育不足や抗けいれん剤服用の副作用、食事摂取量の不足、水分不足などから便秘になりやすい。
問17 児童福祉施設の栄養と食生活についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 児童福祉施設における食事の役割としては、栄養補給、食習慣のしつけ、栄養教育、情操教育などがある。
B 食中毒が発生した場合に備え、その原因追求の為に、給食に出した食事の一部を?20℃以下で3日間保存しなければならない。
C すべての児童福祉施設は、家庭に代わって1日の食事を提供する。
D 食物によると思われるアレルギーをもつ子どもの給食は、保護者の申し出により除去食の対応を行う。
E 保育所における調乳は、0歳児数が10名以上の場合には、安全性が高く省力化にも役立つ無菌操作法を用いることが多い。
A B C D E
1 ○ ○ × × ○
2 ○ × ○ ○ ×
3 ○ × × × ×
4 × ○ × ○ ○
5 × ○ × × ×
問18 病気のときの栄養と食生活についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 発熱している場合、水分の補給のほかに、新陳代謝が旺盛になっているのでたんぱく質やビタミンCの補給も必要である。
B 上気道炎でせきがでる場合や嘔気がある場合には、咽頭を刺激しやすい酸味の強い食品は避ける。
C 乳児で比較的軽症の下痢では母乳は中止せず、食欲があればそのまま続ける。人工栄養の場合、濃いめのミルクを与える。いずれも授乳間隔をきちんとあける。
D 下痢の場合、脂肪の多い食品、柑橘類、食物繊維を多く含む食品の積極的な摂取が望まれる。
E 口内炎の場合には、口の中が痛むので食べ物や飲み物を少量ずつ回数を多く与えることは避ける。
A B C D E
1 ○ ○ × ○ ×
2 ○ × × × ○
3 × × ○ × ○
4 ○ ○ × × ×
5 × ○ ○ ○ ×
問19 学童期・思春期の肥満と高脂血症についての記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 体内の脂肪、ことに皮下脂肪が過剰に増加した状態を肥満という。学童期にみられる肥満は、高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病の誘発要因として問題視されている。
B 学校保健統計によると肥満傾向児は男女児共に年々増加傾向をたどっており、出現のピークは6?8歳ごろで、その出現割合は15%前後である。
C 一般に肥満度は[(実測体重?標準体重)/標準体重]x100(%)で算出される。標準体重は年齢別、性別、身長別の標準体重を用いる。
D 高脂血症とは、空腹時の血清中の総コレステロール、アルブミン、またその両者が上昇した状態をいう。小児期に高脂血症であった者は成長後も高脂血症の傾向を示す者が多い。
E 高脂血症の発症要因として、食事の洋風化、すなわち、エネルギーや動物性脂肪(魚は除く)、食物繊維の過剰摂取などがあげられる。
1 AB 2 AC 3 CD 4 BE 5 DE
問20 栄養教育についての記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 栄養教育の教材(媒体)は、教育の際に対象者に対し補助的手段として使用されるものであるが、栄養教育の最終的な目標である「性格の変容」を図るうえで、教育を受ける側が改善の実践意欲を高め、実行する観点からその教育内容を効果的に理解することを助けるものである。
B 栄養教育は、その対象者の現在の状況について過去の経緯も含め的確に実体を把握することを基本に実施する。さらに、把握した実態のなかから問題点を発見し分析することが必要になる。
C 主な食生活調査の方法としては、栄養素等摂取状況調査、食品群別摂取状況調査、調理法別の食事状況調査、味付け等の食習慣調査などがある。
D 個人を対象として行う栄養教育は、パネルディスカッション、ブレインストーミング、ロールプレイングなど、それぞれの教育方法の特徴を活かした形態で実施されている。
E 栄養教育の評価には、教育中に行うもの、教育後、教育前後で比較するものがある。複数組み合わせて行うことが望ましい。
1 ABC 2 ABD 3 ACE 4 BCE 5 CDE
↓ ↓ ↓ 解答をチェック ↓ ↓ ↓
問1.4 問2.5 問3.1 問4.4 問5.5 問6.1 問7.5 問8.2 問9.3 問10.5
問11.3 問12.2 問13.2 問14.2 問15.4 問16.4 問17.3 問18.4 問19.2
問20.4