今の仕事をはじめられたきっかけを教えていただけますか?
僕は、東京芸大在学中に「FOUFOU」という人形劇団に所属してまして、その頃から人形劇の舞台創作などに夢中になっていったんですけど、ある時友人のつてで、NHKの幼児番組のアルバイトをさせてもらう機会がありまして、枝常弘さんという師匠とであえました。短期のバイトのつもりだったんですけど、のっぽさんでおなじみのNHK「できるかな」の立ち上げから参加し、終了までの20年間造形指導の担当を務めることになったんです。
その間もさまざまな幼児番組を手がけたり、のっぽさん終了後もわくわくさんでおなじみの「つくってあそぼ」や「いないいないばあっ!」などの造形監修担当として仕事をさせてもらい、かれこれ、この世界で42年目になります。
お仕事をする上で、大切にしていることってどんなことですか?
造形って、文字でいうと「かたち」を作ると書くんですけど、幼児の場合、形を作る以前に、「いのち」を作るっていうか、命をふきこむっていうことがありまして、それを大切にしたいなって思うんですよ。
子どもって、なぐりがきの時期を経て、だんだん人物らしき絵を描き始めると思うんですけど、描きはじめの頃って、顔から直接手足が出ていたりする、いわゆる「頭足人」と呼ばれる絵だったりしまよね。こういった表現力は、人間の「かたち」の表現というよりも、むしろ、人間の「存在」、つまりは「いのち」の表現としてとらえた方がよいのではないでしょうか?「かたち」じゃないんですよね。形でいくと上手とか下手とかっていう話になってしまいますけど、そうじゃなくて、その子がどれだけその作品に思いを込めているか、その作ったものを大切に思っているか、その辺ですよね、大切にしたいのは。
この仕事をしていて良かったなぁと感じるのはどんな時ですか?
私が工作を考えて、シノプシス(あらすじ)を作ります。それに脚本家の方にセリフをつけてもらって、それから、ディレクターの人に台本にしてもらって、役者さんに動かしてもらう。当然、その過程の中には、造形スタッフの方がいて、人形つかいの人がいて、音楽家がいて、カメラマンがいて・・・とチームプレーになりますから、それは楽しみがありますね。
自分が考えたことが「あっ、こんな風になったんだぁ」っていう楽しみですね。みんなで作り上げていくのが、テレビですから、これは楽しいですよ。とっても。一人で作るよりも、何倍もみんなで分かち合えるから、それがとっても楽しいですね。あと、一緒に仕事をする方々から、「子どもの頃あの番組を見て育ちました」とか、「影響を受けてこの世界に入ってきました」とか言われる事が多いんですけど、そういう時は、やってきて良かったなと思いますね。
今後、どういったことに取り組んでいきたいですか?
作家として、自分の作品っていうものをはっきりと作っていかなければいけないとは思っています。造形の指導書も作りたいし、工作のアイデア集みたいなものも作りたいし、それから、絵本も作りたいなって思っているし、マンガも描きたいかなあ。番組の漫画はずっと何冊も描いてきているんですよ。まぁ、今まで作りためてきたものを形に残していきたいなって思っています。
あとマリオネットの方は、僕のライフワークみたいなもので、ただの人形が糸いっぽんで、命をもって動き出すところが気に入っているんですけど、そういうものを今後も続けていきたいなと思っています。
最後に、このコラムを見ている読者に向けて何かメッセージをお願いします
僕が今までにお会いした女性の方で、お仕事でいうと、保育士さんと看護師さんが最も生き生きと仕事をしているなっていう印象がありますね。
やっぱり命の現場にいるっていう自信とそれから責任ですかね。そういうものを果たしていらっしゃる仕事なので、皆さんとても生き生きとお仕事なさっているなってお会いする度にそう感じましたね。
だから、保育士の皆さん、この素晴らしいお仕事にプライドを持って頑張っていただければと思います。
ヒダオサム 主な活動歴
1970~1990 | 「できるかな」造形指導 | NHK教育テレビ |
1972~1975 | 「少女仮面」「人狼都市」などの人形協力 | 状況劇場 |
1973~1980 | 「ママとあそぼうピンポンパン」企画スタッフ | フジテレビ |
1973~1975 | 「ひらけポンキッキ」美術スタッフ | フジテレビ |
1973~1976 | 「おかあさんといっしょ」企画および美術スタッフ | NHK |
1974 | ヒダマリオネット公演「パラダイス」 | 目黒福祉センターホール |
1982 | 「瘋癲ブドー」宇野萬舞踏公演出演 | 明石スタジオ |
1982 | マリオネット「手品のような小さなサーカス」 | 三鷹スタジオ |
1982 | 個展「ゆれるおもちゃ展」 | 西武池袋店・アトリエ・ヌーボー |
1983 | 「音楽の広場」レギュラー出演 | NHKテレビ |
1984~1989 | 「ことばのくに」変身タンマ篇 | NHK教育テレビ |
1987~1988 | 「あいうえお」きらり篇 美術制作 | NHK教育テレビ |
1988 | 「プルプルプルン 」人形デザイン・美術製作 | NHK教育テレビ |
1989 | 「やっぱりヤンチャー」人形デザイン | NHK教育テレビ |
1990 | 「ともだちいっぱい」人形デザイン・人形製作 | NHK教育テレビ |
1990~ | 「つくってあそぼ」「つくってワクワク」造形監修 | NHK教育テレビ |
1990~ | 「つるのおんがえし」(マリオネット) | 豊島園・カッパ座 |
1991~2007 | 「こども人形劇場」人形デザイン・人形美術 | NHK教育テレビ |
1992 | 「ねんどママ」シリーズ、アニメ製作 | NHK教育テレビ |
1993~ | 「いのちをつたえる紙あそび」 | メイト、サマースクール |
1999~2008 | 「いないいないばあ!」造形アイデア | NHK教育テレビ |
2002 | マリオネット公演「動物図鑑」「パラダイス」 | シアタートラム |
2002 | 「公園通りで会いましょう」出演 | NHKハイビジョン |
2003 | 西村由紀江「ふんわりぴあの」マリオネットゲスト出演 | 青山MANDALA |
2003 | 西村由紀江ピアノコンサートゲスト出演(マリオネット) | 豊中アクアホール 光が丘IMAホール |
2004 | 「おじいさんと犬」人形美術マリオネット出演 | NHK教育テレビ |
2010 | 所沢なんでもアリーナ「ヒダオサムの世界」 | 所沢中央公民館 |