保育施設や幼稚園で働く先生たちにとって、保護者対応は必ずと言っていいほど身につけなくてはならない必須スキルです。しかし、現場の先生とお話をしていると、保護者の方々との関わり方について悩んでいる先生がとても多くいます。今回はそんな保護者の方々との円滑な関係を築いていくためのコツをお伝えしていきます。
保護者対応は何よりもコミュニケーションが大事
「先生はうちの子どものことをしっかり見てくれているのだろうか」「保育園内ではどんな生活をしているんだろう」。 普段、保護者の方々とお話をしていると、入園・進級直後を中心にこの手の話題がよく出てきます。
実は、年度の変わり目は保護者の方々との信頼を構築する上で最も大事な時期。
園内も落ち着かず、子どもや新しい先生ともたくさんコミュニケーションを図らなければいけない忙しい期間ですが、保護者との信頼関係を築く上で、ここでつまずくと後で取り返すのが非常に難しくなります。反対にスムーズにスタートを切ることができると、後から多少の問題が起こったとしても解決に向かいやすくなります。
保護者からのクレーム対応方法
今回は先輩保育士たちのクレーム対応の失敗を例に、一つずつ対応方法を考えていきましょう。
上司への報告忘れ
事故や問題が起こると、ほとんどの方は焦ります。その状況の中で何とか無事解決できると、安心した気持ちに包まれてすべてが終わった気になってしまいます。そんな中、翌日園に行ってみると、なんと園長からお呼び出し。
話を聞いてみたところ、昨日トラブルのあった親御さんから直接園長宛てにクレームが入ったらしい。しかしながら園長先生はそのトラブルをまったく把握していなかったため、大問題になってしまっているとの事。
こういったミスは保護者・上司に対して非常にマイナスな印象を与えてしまいます。
同じ様な失敗を防ぐためには、何かが起こった時にまずは「報告」です。ただ、緊急事態などではそういかないこともありますので、必ずメモを取って頻繁に見返すクセをつけましょう。また、周りの職員との連携も重要となりますので、日頃から他の先生ともしっかりとコミュニケーションを取ることも大切です。
問題を軽く見た
たけし君とみかちゃんが今日もケンカ。ちょっとひっかき傷が出来ちゃったけど、きっと大丈夫。早番だったので16時過ぎに園を出たのだけれど、気づいたら見覚えのある園の電話番号からの着信が……出てみると、同じクラスの先輩の先生からで、みかちゃんの保護者に傷の件を聞かれ、原因を答えられなかったため、情報共有ができていないとお叱りの言葉を受けてしまったとの事。 些細なことに思えても、受け取り手によっては大問題と感じることも。
どんな小さなトラブルでも必ず関係者への情報共有と、上司への報告・連絡・相談を徹底しましょう。この頭文字を取った≪報・連・相=ホウレンソウ≫は一般業界でもとても大事にされている言葉です。
事故後の対策をしなかった
保護者の中でクレームについての情報は驚くほど早く共有されていきます。
何の対策もたてないまま、同じトラブルが発生すると、「以前と全く変わっていない。結局何もしてくれていない。」という印象から保護者からの園に対する風当たりは本当に強くなります。
問題が起こった際は原因を必ず特定し、積極的に対策を立てるよう心がけましょう。
ベテランの先輩に聞いたコミュニケーション能力アップの秘訣
クレームを受けていたはずなのに、10分後にはその保護者の方と楽しそうに会話をしている人がいます。
そんな時、「あの人は会話のセンスがいいから……口下手な私には到底ムリ」なんて思ってしまっていませんか。それはとってももったいないこと。ちょっとしたコツを実践することで、あなたのコミュニケーション能力は飛躍的に向上するかもしれません。
まずは相手を受け入れる
相手がクレームを言っている最中、言葉の端を切り取ってとっさに「それは違うと思います」と切り返してしまう方がいます。
確かに相手の方が間違っているかもしれませんが、こうなってしまうと怒りに火を注いでしまい、手がつけられなくなってしまいます。
まずは、話を遮らずに相手の話をしっかりと聞いた上で、謝罪と今後の改善策を伝えていきましょう。
ネガティブな言葉は避ける
日頃からの心がけが重要ですが、普段からマイナス思考でいるとネガティブな言葉が出やすくなります。
「でも」「どうせ」は典型的なワードですが、園長や先輩に怒られている時にも「しかたがなかった」であったり、「他の人が悪かった」なんて言ってしまうと、あくまでも自分の問題として捉えていないと思われるため、さらに怒られたり、度が過ぎると見捨てられてしまう可能性もございます。
プラス思考になるための簡単で良いトレーニングとしては、【小さな幸せを日頃から見つけるように意識する】【ネガティブな言葉を言ってしまった時にポジティブな言葉に言い換える】という方法がおススメです。最初は慣れない作業なのでなかなか難しいですが、2、3週間もするとそういった行動が自然にできるようになってきます。
笑顔で積極的に話しかける
『なかなかそれができないから困ってるのに』と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、そういう方はまずは笑顔で挨拶をすることを意識してみましょう。
『それくらいはやっているつもりだけれども、そもそも共通の話題が……』という方は、「明日からは少し涼しくなるみたいですね」や、「駅前に新しいパン屋さんできるみたいですね」といったように【気候】【ニュース】【環境】【洋服】【健康】【通勤】のネタを軸にすると話が作りやすくなります。
気難しいタイプの人にはたくさん教えてもらうようお願いをする
いつも難しい顔をしている。すぐに怒るから極力話しかけたくない。
みなさまの周りの先輩や保護者にもそういうタイプの方っていると思います。
しかし、こういったタイプの方は強い影響力を持っていることが多く、味方についてくれるととても頼りになることが多くあります。
あくまでも傾向ですが、こういったタイプの方を見ていると、「人に教えるのが好き」なことが多くあります。
避けて生きたいと思う気持ちも痛いほどわかりますが、勇気を持って接してみてください。話してみたらその方の意外な『優しい部分』や『お茶目な部分』を見ることができるかもしれません。
ただ、あまりにも簡単なことを聞くと怒られるかも知れませんので、質問に対する下調べはしっかりと行うようにしましょう。
※本記事は『保育パートナーズ通信 vol.10 (2017年8月1日発行)』のコラムページに加筆・修正を加えたものです。最新の記事をご覧になりたい方は、無料で年4回(2,5,8,11月)ご自宅に郵送しておりますので、会員登録の上、メールにて購読希望の旨をお知らせください。