保育士試験

2005年度保育士国家試験 発達心理学

平成17年度 発達心理学

 

問1 遺伝と環境の働きについての記述である。適切な記述を一つ選びなさい。

1 遺伝と環境は共に重要であり、相互に関係しあって、個体の発達に影響を与えていく。

2 子どもは白紙として生まれ、その発達は保育者や養育者の働きかけですべてが決まる。

3 生まれついての遺伝的な影響が何より重要なのだから、どのような遺伝となっているかを科学的にとらえて、これを中心において対応を考えるべきである。

4 身体面では確かに遺伝が重要であるが、心の面については、何より養育者との関係次第であり、遺伝が関係することない。

5 遺伝的な障害については、どの障害でも、環境を整えることで治癒されるものである。

 

問2 おとな(養育者)と子どもの関係における「共同注意(共通の注目)と呼ばれる現況が乳児期の発達にとって重要であるといわれる。どうしてであろうか。不適切な記述を一つ選びなさい。

1 目と目を合わせ、笑顔を向け合い、生き生きとした感情の交流が起こるから。

2 第三のものを指さし、おとなが命名し、乳児がそれをそのものの名前だと分かるということを通して、言葉の獲得を可能にするから。

3 子どもが興味をもったものをおとなにも興味を向けてもらえ、うれしくなるから。

4 子どもがかかわろうとするものにおとなが注意を向け、表情や声を通してそのものの価値を伝える始まりとなるから。

5 おとなと子どもの間で共に関心を持つものが生まれるので、共有する世界が生まれ、広がるから。

 

問3 新生児と生後2~6か月までの乳児に顔の図版などを見せて人の顔を好んで注視するかどうかを調べた実験がある。この実験から、小さい時期の子どもの注視についてわかることは何か。不適切な記述を一つ選びなさい。

1 新生児でも人の顔の図版をそうでない図版よりもよく注視する。

2 新生児より2か月以上の子どものほうが人の顔をよく注視する。

3 単純な色だけのものより模様のある図版のほうをよく注視する。

4 注視しやすいものは、それだけ乳児の生存とその後の学習にとって重要なものなのである。

5 人の顔の注視は、まず母親など世話をしてくれる人への愛情により生じる。

 

問4 ことばの獲得において、「一次的ことば」と「二次的ことば」を区別することがある。その説明として不適切な記述を一つ選びなさい。

1 一次的なことばは特定の人との対話的な関係で展開され、二次的なことばは不特定多数の相手に一方向から発することを主とする。

2 一次的なことばは話し言葉が主であり、二次的なことばは書きことばを主とする。

3 一次的なことばは一語から成る簡単な文であり、二次的なことばは複雑でいくつも文を重ねた長い文章である。

4 一次的なことばはまわりの状況に頼り、二次的なことばはそれ自体として理解できることを目指している。

5 一次的なことばはその場で起きていることを指し示し、二次的な言葉はその場を離れたことをさし示すことが多い。

 

問5 「保育所保育指針」に「子どもの発達は、子どもと子どもを取り巻く環境内の人や自然、事物、出来事などとの相互作用の結果として進んでいく。」とある。その趣旨に沿ったとらえ方として正しい記述を一つ選びなさい。

1 子どもは基本的に一人で発達していくものであるから、おとなが、かわいそうだからとか、援助しなければ発達しないと考える必要はなく、ただ子どもの行動を冷静に見守るだけで十分である。

2 自分がおとなにかかわってもらえたように、自分からも大人にかかわろうとする。このおとなとの関係を土台として、次第に他の子どもとのあいだでも相互に働きかけ、社会的相互作用を行うようになる。

3 子どもには自分なりに考えることがなく、おとなの行動を模倣して同じ行動を行うので、おとなは見本となるような正しい行動を常にしなければならない。

4 子どもは自己中心的であるので、自分の考えを相手に理解してもらいたいという気持ちをもったり、相手に説明しようという気持ちをもつことはみられない。

5 ほかの子どもとのふれ合いの中で、少しずつ友達と分け合ったり、順番を守って遊んだりできるようになるのは、5歳児の発達の特徴である。

 

問6 1920年インドのゴダムリで児童養護施設園長のシング(J.A.L.Singh)達によって、「子ども狼のすぐ後ろから、化け物?恐ろしい形相をした生き物が現れた。手・足・体は、人間のようだった。」という、カマラ(Kamala,推定8歳)とアマラ(Amala,推定1歳半)が見つけられた。彼女たちの行動の特徴は何か、次の文章のうち正しい記述を一つ選びなさい。

1 彼女らは、始め、ひどく無関心であった。部屋の隅に一緒にうずくまり、壁の方を向き、何か重大な問題をじっと考えているみたいに、数時間もそのままの姿勢を続けていた。

2 子どもたちが一緒に遊ぼうと誘ったら、最初から笑顔で遊びだしたが、気に入らないことがあると歯をむき出して怒ったり、耳ざわりな声をたてて向かってきたりして、子ども達を驚かした。

3 カマラは二足歩行の練習を熱心にした結果、どこへでも行くことができるようになり、しばらくすると直立して走ることもできるようになり、素早く、自由に、行動することができるようになった。

4 カマラは1928年になると推定16歳になり、ふつうの両親の家庭で育てられた人と同じような16歳の能力をもった女性のように成長した。

5 言葉は児童養護施設に来てから、まわりのおとなや子ども達が話していることを聞いて覚えることができ、4年後には日常会話は流暢に話すようになった。話す語数も数百語を使用するようになった。

 

問7 スキンシップといわれている接触慰撫(contact comfort)は、アメリカの心理学者ハ?ロウ(Harlow,H,F)の研究によって明らかにされた行動である。その説明として適切な記述を一つ選びなさい。

1 自分の腹を痛めて子どもを産んだというそのことに対して何らかの疑問を抱き、葛藤があるときでも、母親は、スキンシップを繰り返し続けて行うことにより、母性的感情を必ずもつようになる。

2 母親が行う第1の事柄は、子どもに対して、密接な身体接触を与えるということである。この身体接触が、子どもの側に愛情を芽生えさせる基本的なメカニズムとなる。ほとんどの母親は、赤ん坊を最初に見たそのときから愛情を示し、積極的にみずから赤ん坊に近づいて、あやす。

3 母親の場合、自分の産んだ新生児に対する反応は、それぞれの文化の要因によってのみ異なる。しかし、すべての母親は、望んで産んだ子どもならば、愛情をもって見つめ、必ずかわいいと思う。

4 母親が果たさなければならない第2の事柄は、ホメオスタシスを保とうとする子どもの生物学的欲求、特に飢えと渇きの欲求を満足させることである。そのやり方は、水を飲ませ、食物を食べさせることである。

5 母親が果たす第3の事柄は、自分の子どもが近所の子どもとひどいケンカをしたときに、まず、自分の子どもが悪かったと相手の子どもと母親に謝り、同時に自分の子どもをきつく叱ることである。

 

問8 乳児期の愛着についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A ボウルビーは、愛着の概念を提唱し、愛着形成の質を評価する新奇場面法(ストレインジ・シチュエーション法)を開発した。

B 乳児は、養育者をひきつける愛着を可能にする行動を生得的にもっている。

C 養育者が否定的な感情をいだいて接すると、乳児は間主観性の中で敏感に察知し、相互作用に悪循環が生じる。

D 愛着の最初の対象は、必ず母親である。

E 乳児は、誕生から1か月のころに、すでに特定の人に対して愛着行動を向けている。

  A B C D E
1 ○ × × ○ ×
2 × ○ ○ × ○
3 ○ × ○ × ×
4 × ○ × ○ ○
5 × ○ ○ × ×

 

問9 ブロンフェンブレンナーの生態学的発達理論について子どもを中心に考えたとき、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 発達の生態学的理論では、四つの種類のシステムが子どもを中心としてそれを取り囲むような階層構造をなしている。

B エクソシステムは、親の職場や親の社会的ネットワークのように、そのシステムに子どもは直接かかわっていないが、親を通して子どもが影響を受ける環境である。

C マクロシステムとは、親子関係のように個人が直面する生態的環境で、最も位相的に深い層である。

D メゾシステムは、政治・法律・習慣などのように、文化全体のレベルで存在している。

  A B C D
1 ○ ○ × ×
2 × ○ ○ ×
3 ○ × × ○
4 × ○ × ○
5 ○ × ○ ○

 

問10 乳幼児期から児童期における子どもの発達についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 1歳のころになると、信頼する親しい人を安全基地として、盛んに探索行動をくりひろげ遊ぶようになる。

B 2歳から3歳までは、平行、連合、共同遊びのうち、平行遊びが多くなるが、それは他児と一緒に遊び、活動についてやりとりや会話があるものである。

C 児童期の子どもたちは遊びを通して仲間意識を強めて、行動を共にする。秘密の規則や場所をもつなど結束力の高い仲間集団が顕著になる時期をギャングエイジという。

D 4歳を過ぎたころから、箱を電車の代わりに、木の葉を皿の代わりに用いるなど、目の前にあるものを目の前にないものに見立てて遊ぶ姿が見られるようになる。

E ごっこ遊びは、幼児期に最も多く見られる遊びであるのに対して、ゲームのようなルールのある遊びは幼児期の終りから児童期に最も多く見られる。

  A B C D E
1 × ○ × × ○
2 × ○ ○ ○ ×
3 ○ × × ○ ×
4 ○ × ○ × ○
5 ○ × ○ × ×

 

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