平成17年度 社会福祉
問1 社会福祉サービスの供給に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 社会福祉における普遍主義とは、すべての国民を対象として生活関連施策を整備することを意味する。
B 社会福祉における普遍主義の普及は、古くからあった社会福祉の課題となっていたスティグマの解決に寄与するものとなっている。
C 古い福祉ニーズとしてあった絶対的貧困は、今日の日本社会においてはすでに完全に解決され、相対的貧困問題が残るだけである。
D 今日の社会福祉施策において、伝統的な救貧事業は相対的に縮小し、代わって各種社会福祉制度とともに、児童福祉、介護予防等の防貧的な福祉政策が拡大している。
A B C D
1 ○ ○ × ○
2 × ○ ○ ×
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 ○ × ○ ○
問2 日本における社会福祉の歴史に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 社会福祉制度が充分に発達していない時代において、地縁型相互扶助や宗教的な慈善活動は、自発的な福祉活動として登場した。
B 第一次世界大戦後に登場した救護法は、生活困窮者への救護および治安の維持のための手段としての意味をもった。
C 今日、国民の生活困窮に対する援助の責任は国家にあることが法律で定められている。
D 今日、公的な社会保障制度が確立したため相互扶助などの自発的な生活保障の活動は不要になったといわれる。
A B C D
1 ○ × ○ ○
2 × ○ × ○
3 × × ○ ○
4 ○ ○ × ×
5 ○ ○ ○ ×
問3 第二次世界大戦後のわが国の社会福祉法制に関する記述である。誤っている記述を一つ選びなさい。
1 日本国憲法第25条で国民の生存権が規定され、法律用語としてはじめて社会福祉が用いられ、国は社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に義務を負っているとされた。
2 昭和20年代に制定された福祉三法(生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法)は第二次世界大戦直後の国民生活の窮乏や混乱に対応することを目的としており、特に生活保護の果たした役割は大きかった。
3 昭和30年代に福祉六法体制が確立することとなるが、その背景には、高度経済成長の歪みが家庭機能の低下や地域コミュニティの崩壊などとなって現れ、生活問題が広範で深刻な社会問題となったことがあげられる。
4 平成2年(1990年)には、到来する高齢社会に対応するため、社会福祉関連八法改正が行われ、これにより福祉の基調が施設福祉中心から在宅福祉へと転換されることとなり、老人福祉法に基づき老人保健福祉計画の策定が義務付けられた。
5 平成12年(2000年)の社会福祉基礎構造改革で、判断能力に障害のあるものを支援する成年後見制度や障害者の支援費制度、介護保険法が成立し、同年から施行され、利用者本位の福祉サービス提供が始まった。
問4 社会福祉におけるノーマライゼーションの理念に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A ノーマライゼーションの理念は、コミュニティケアや脱施設化の理念と連動するものである。
B ノーマライゼーションの理念の狙いは、発達が正常でない人びとに対して発達保障としての療育を与えることによって、彼らをノーマルな人にさせることにある。
C ノーマライゼーションの実現のためには、社会福祉施策の改革ばかりでなく、社会全体の取り組みが必要である。
D 児童・生徒に対する福祉教育あるいはボランティア体験学習は、ノーマライゼーションの考え方を普及させるものとして考えることもできる。
A B C D
1 ○ ○ ○ ○
2 × ○ ○ ○
3 ○ × ○ ○
4 ○ ○ × ○
5 ○ ○ ○ ×
問5 自己実現に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 自己実現は、心理学者マズローの理論を根拠にした心理学的な価値であるが、社会福祉の価値ということもできる。
B 自己実現の達成には生活の質(QOL)の向上は不可欠であるが、QOLの指標として主観的な側面、生活環境の側面、身体的・精神的側面などを尺度化することによって、自己実現という概念を客観的に測定する手がかりを得ることができる。
C 利用者の自己実現に関する援助は利用者の成長・発達を目指したものであり、重い障害のために成長・発達を望みにくい利用者に対しては、自己実現に関する援助はできない。
D 今日ではわが国の福祉サービスの目標は、最低生活保障だけでなく、自己実現やあらゆる分野への参加が含まれるようになった。
A B C D
1 ○ ○ × ○
2 × ○ ○ ×
3 ○ × ○ ×
4 ○ × × ○
5 ○ ○ ○ ○
問6 地域福祉に関する記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 国は地域における福祉サービスの総合的な実施計画を策定しなければならない。
B ボランティアあるいは特定非営利活動法人は介護、街づくり等へ積極的に参加して新しい公共をつくることが期待されている。
C 従来の伝統的な住民組織に代わって新しい市民組織がコミュニティをつくらなければならない。
D 子育て支援システムづくりのような福祉課題の具体的解決の仕組みをつくり出すによって、コミュニティづくりの足がかりができる。
1 A B 2 A C 3 B C 4 B D 5 C D
問7 社会福祉における中央集権と地方分権に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 平成11年(1999年)に成立した「地方分権一括法」により機関委任事務は廃止され、国の業務を地方公共団体が委託されて実施する法定受託事務と、それ以外の自治事務に区分された。
B 拡大する介護問題の対策として在宅福祉サービスの拡充が不可欠であることから、分権化の推進が求められている。
C 介護保険制度は保険料を全国一律にするなど、分権化に逆行するものとなっている。
D 社会福祉における中央集権は、全国一律の社会保障制度を構築するため、今後も中心的な役割を果たすべきものと期待されている。
A B C D
1 ○ ○ × ×
2 × ○ ○ ×
3 ○ × ○ ×
4 × ○ × ○
5 ○ × ○ ○
問8 社会福祉における公的責任の変化に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 日本の社会福祉行政は、市場原理を積極的に活用するために企業の参入を促したが、それは「小さな政府」を目指す他の先進国の流れを見ると逆行したものとなっている。
B 「措置から契約へ」という流れの中で、社会福祉行政はサービス提供者として責任を負うよりは、いままでは利用者が適切に福祉サービスを利用できるようにするために管理運営責任を果たすべきものとして重点が移行してきた。
C 社会福祉基礎構造改革により公的部門の責任内容は変化することになったが、この改革は、拡大し多様化する国民の福祉需要に対応するものであった。
D 社会福祉行政は最後の安全装置(セーフティネット)の機能を果たすため、ホームレス問題のように制度の網の目からもれた人々については行政部門だけで対応しなければならない。
A B C D
1 × ○ × ○
2 × ○ ○ ×
3 ○ × ○ ○
4 ○ ○ ○ ×
5 ○ × × ○
問9 保育所における個人情報保護の取り扱いに関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 利用児に不自然な外傷があり、おびえた表情を頻繁に見せるようになり身体虐待が疑われたので、保護者に相談なしに市町村の児童福祉担当にその利用児に関する情報を提供した。
2 保護者会から保護者間の連絡のために名簿を作成したいとということで、保護者の氏名・住所・電話番号について資料の提供を求められたので、名簿を保護者だけに配布することを条件として提供した。
3 粗暴な行動の多い利用児について、保護者に連絡しようとしたところ「おこられるから、お母さんに言わないで」と利用児から言われたが、保育所の状況を保護者に連絡し、保育所や家庭での対応について協議した。
4 同じ法人が経営する保育所と児童家庭センターの連絡会議で、両方でかかわっている家族について事例検討をおこなうこととなり、その家族に同意を得ないままに、実名で現状を報告し、議論した。
5 実習生が、実習後に学内の保育実習生だけの実習報告会で発表する資料に、利用児の氏名や家族状況を記載していたので、利用児やその家族が特定できないようにするよう資料の修正を求めた。
問10 生活保護に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 教育扶助は、小学校・中学校・高等学校における教材費などの教育に要する経費を支給するほか、修学旅行積立金や入学時のカバン代などが支給される。
B 医療扶助は、必要な医療を現物給付するだけでなく、治療材料やめがね、移送料の給付も行う。
C 重度障害のため介護を必要とする場合には、40歳未満で身体障害か知的障害のいずれかがあれば介護扶助により介護が現物支給される。
D 職業能力を身につけるため工業高校や商業高校へ進学する場合には、生業扶助から授業料が支給される。
A B C D
1 ○ ○ × ×
2 ○ × ○ ×
3 × ○ × ○
4 × × ○ ○
5 × ○ × ×
問11 市町村における社会福祉の行政計画に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 地域福祉計画は、社会福祉法により規定されており、地域福祉の推進に関する事項について策定することとされ、策定に際しては住民が参画することを求めている。
B 保育計画は、次世代育成支援対策推進法により策定することとされており、必要な保育の確保に関する方策と併せて、保護者が積極的に子育てに取り組めるように職場でも支援することを求めている。
C エンゼルプランは、児童福祉法により策定することとされており、児童を取り巻く環境の健全化、児童福祉施設の整備、児童福祉にかかわる人材確保等を定めることとされている。
D 母子保健計画は、国の国民運動計画である「健やか親子21」を推進するために、母子保健法により規定されており、思春期の保健対策の強化と健康教育の推進などについて数値目標を策定することとされている。
A B C D
1 ○ ○ × ○
2 ○ × × ×
3 × ○ ○ ×
4 × ○ × ×
5 × × ○ ○
問12 社会福祉事業に関する記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 第1種社会福祉事業は、国、地方公共団体、社会福祉法人(日本赤十字社を含む)が経営することが原則である。
B 社会福祉施設は第1種社会福祉事業とされており、保育所も第1種社会福祉事業である。
C 第2種社会福祉事業の実施主体については、非営利の公益法人であればよく、社団法人、財団法人、特定非営利活動法人など多様である。
D 事業の内容が第1種または第2種の社会福祉事業に該当しても、事業の規模や期間によっては社会福祉事業として許可を得られないことがある。
1 A B 2 A D 3 B C 4 B D 5 C D
問13 雇用保険に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 雇用保険の事業内容は、失業したり、雇用の継続が困難であったり、職業訓練等を受ける場合に必要な給付を行う事業と、雇用安定、能力開発、雇用福祉に関する事業とで構成されている。
B 雇用保険の保険料は、雇用者が全額負担することとされており、解雇者が少ない事業所に対しては保険料を減額するメリット制度が導入されている。
C 基本となる離職者に対する求職者給付の給付日数は一律ではなく、離職者の年齢、身体障害の有無、就職の難易度、被保険者期間、離職理由などに応じて決定される。
D 雇用保険の保険者は国であるが、公務員・船員は加入することができない。
A B C D
1 ○ ○ × ×
2 ○ × ○ ○
3 × ○ × ○
4 × × ○ ○
5 × ○ × ×
問14 福祉サービス評価の第三者評価に関する記述である。適切な記述の組み合わせを一つ選びなさい。
A 福祉サービスの質の公平かつ適切な評価の実施方法として考案されたものが、第三者評価の制度である。
B 都道府県などによる指導監査と第三者評価の目的や内容は共通であるため、第三者評価を行った社会福祉施設については指導監査が免除される。
C 専門家による客観的な評価であるが、事業者自身の自己評価や利用者からのアンケート調査も評価のための基礎資料とされる。
D 第三者評価の実施については、公正を期すために行政機関が実施することとなっており、民間業者の参入は認められていない。
1 A B 2 A C 3 B C 4 B D 5 C D
問15 地域福祉権利擁護事業(福祉サービス利用援助事業)に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 地域福祉権利擁護事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など判断能力が十分でない者を対象として、その意思決定を支える制度である。
2 地域福祉権利擁護事業では、利用支援サービス、日常金銭管理サービス、財産保全サービスを行っている。
3 地域福祉権利擁護事業は、第2種社会福祉事業として定められている。
4 地域福祉権利擁護事業のサービスを利用する場合は、福祉事務所に申請を行い、支援内容を確認してから契約を結ぶことになっている。
5 地域福祉権利擁護事業を利用する対象者には、医療機関に入院している者及び社会福祉施設に入所しているものも含まれている。
問16 利用者の権利擁護に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 福祉サービスを利用している場合の権利擁護の仕組みとして、社会福祉法では、社会福祉事業の経営者は利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないと定められている。
B 苦情解決の体制としては、社会福祉施設に苦情受付担当者や苦情解決責任者、第三者委員を設置することなどが定められている。
C 第三者委員制度とは、サービスの利用者やその家族等から福祉サービスの提供に関する苦情や疑問などを聞き、調整する制度である。
D 社会福祉施設以外の苦情解決システムとして、都道府県社会福祉協議会に権利擁護保障検討委員会が置かれている。
A B C D
1 × ○ × ○
2 × ○ ○ ○
3 ○ × ○ ×
4 ○ ○ ○ ×
5 × × ○ ○
問17 【I群】の人物と関係の深い語句を【II群】の中から選ぶとき、正しい 組み合わせを一つ選びなさい。
【I群】 A リッチモンド (Richmond,M.) B パールマン (Perlman,H.) C ホリス (Hollis,F.) D ロス(Ross,M.) E シュワルツ (Schwartz,W.)
【II群】 ア 地域組織化説 イ 波長合わせ ウ ケースワークの母 エ 問題解決アプローチ オ 心理社会的アプローチ
A B C D E
1 イ エ オ ア ウ
2 ウ ア イ エ オ
3 エ イ ア オ ウ
4 ア オ ウ エ イ
5 ウ エ オ ア イ
問18 社会福祉援助技術で用いられる専門用語に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びな さい。
A コンサルテーションとは、隣接領域の医学、心理学、法律などの専門家から的確な情報と意見などを受けることをいう。
B モニタリングとは、利用者を援助者との間に形成される信頼関係をいい、面接初期の段階で信頼関係を築くことができるかどうかが、その後の問題解決の方向を決定するといわれている。
C アドボカシーとは、認知症、知的障害、精神障害などのために意思表示が困難な人、または子どもなどに代わって、援助者が権利や日常生活のニーズを主張することをいう。
D ソシオメトリーとは、集団のメンバー間の好き、嫌いなどの感情的な関係を客観的に図式化したものをいう。
A B C D
1 × ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 × × × ○
4 ○ × ○ ○
5 ○ ○ ○ ×
問19 個別援助技術(ケースワーク)のインテーク(受理面接)に関する記述である。不適切な記述を選びなさい。
1 申請者との信頼関係と築くことと主訴を明確に把握するために傾聴した。
2 問題解決における援助者の役割と援助者が所属する機関や施設が提供できるサービスについて申請者に説明を行った。
3 申請者の態度や行動をあるがままに受け入れることが大事なので、反社会的な行為であってもそれを肯定した。
4 申請者の主訴に対して、援助者が所属する機関や施設では援助ができないことが明らかになったので、対応できないことを告げ、相談を終了し、適切な機関や施設に送致したり紹介したりした。
5 インテーク(受理面接)を担当した援助者は、担当者の変更を申請者に伝えて、継続して援助を利用するうえでの動機づけを行った。
問20 社会福祉援助技術に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 社会福祉の分野での福祉サービス計画を構築する方法を社会活動法(ソーシャルアクション)といい、特に、今日では地域社会を中心にして、住民参加による地域福祉計画が策定されている。
B ケアマネージメントは、入口→アセスメント→ケアの目標設定とサービス計画作成→計画の実施→要援護者及びサービス提供状況についての監視とフォローアップ→再アセスメント→終結または継続、という過程を経て進行する。
C 生活モデルとは、利用者の生活問題を直線的因果論ではなく、人と環境との交互作用として理解する立場である。
D 地域援助技術(コミュニティワーク)における援助者の指針となる原則として、援助者主体の原則、協働活動の原則、資源開発の原則の3つがあげられる。
A B C D
1 ○ ○ × ○
2 × × × ○
3 × × ○ ○
4 × ○ ○ ×
5 ○ × × ○
↓ ↓ ↓ 解答をチェック ↓ ↓ ↓
問1.1 問2.5 問3.5 問4.3 問5.1 問6.4 問7.1 問8.2 問9.2 問10.全
問11.2 問12.2 問13.2 問14.2 問15.4 問16.4 問17.5 問18.4 問19.3
問20.4