平成18年度 発達心理学
問1 次の文のうち、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 発達は、受精から死にいたる変容のことであり、加齢とともに経験を積み重ねていくことで成りたっている。
B 発達の規定因として、個人の経験による環境的要因をより強調する考え方が輻輳説(フクソウセツ)である。
C 乳幼児期の発達は、衰退したり、消失したりする変容は生じない。
D 双生児研究法は、発達を規定する遺伝的要因と環境的要因の影響の程度を明らかにすることができる一つの方法である。
E 環境閾値説では、遺伝的要因と環境的要因が相互に作用しあうととらえられている。
A B C D E
1 ○ ○ × ○ ×
2 × ○ ○ × ○
3 ○ × × ○ ○
4 × ○ ○ × ×
5 × ○ × ○ ×
問2 次の文は、「保育所保育指針」第3章から第10章に書かれている、発達の主な特徴の引用である。【I群】の記述と【II群】の発達特徴を結び つけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
【I群】
A 子どもは、この時期、母体内から外界への環境の激変に適応し、その後は著しい発育・発達がみられる。
B 文字を書いたり、本を読んだりすることにも大いに関心を示し、何でも知ろうとして、一層知識欲が増す。
C 子どもは、この時期までに、基礎的な運動能力は一応育ち、話し言葉の基礎もでき、食事・排泄などもかなりの程度自立できるようになってくる。
D 子どもは、この時期、各機能間の分化・統合が進み、話をしながら食べるなど、異なる2種以上の行動を同時にとるようになる。
E 子どもは、この時期、歩き始め、手を使い、言葉を話すようになる。
【II群】
ア この段階では、子ども自身は友達と遊んだつもりになっていても、実際にはまだ平行遊びが多い。
イ 目の前に開かれた未知の世界の探索行動に心をそそられ、身近な人や身の回りにある物に自発的に働きかけていく。
ウ この時期の視覚や聴覚などの感覚の発達はめざましく、これにより、自分を取り巻く世界を認知し始める。
エ 自分以外の人や物をじっくりと見るようになると、逆にみられる自分に気づき、自意識が芽生えてくる。
オ 大人のいいつけに従うよりも自分や仲間の意思を大切にし、それを通そうとするようになる。仲間同士で秘密の探険ごっこなどを嬉々としてする。
A B C D E
1 ア エ イ オ ウ
2 ウ オ ア エ イ
3 エ ア ウ オ イ
4 オ エ ア イ ウ
5 ウ ア エ オ イ
問3 次のヴィゴツキー(Vygotsky,L.S.)の「発達の最近接領域」の考え方として、適切な記述を一つ選びなさい。
1 子どもが自分一人でやれることだけが、子どもの知的能力の指標である。
2 自分と同じレベルの仲間と共同で解くのが、知的能力の指標である。
3 おとなに指導されたり、自分よりもできる仲間との共同で子どもが解く問題によって、知的能力の指標がわかる。
4 発達の中ですでに完了し、実を結んだものだけを発達の最近接領域という。
5 意味もわからず暗記して、問題を解決したが、直ぐに忘れてしまったものも発達の最近接領域である。
問4 次の文は、乳幼児の愛着についての記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 子どもが親に愛着をもつのは、安全に生きのびるために本能的にそなわったサバイバル行動である。
2 乳児が生まれ持った気質のみで、愛着の性質が決まる。
3 子どもは母親だけではなく、父親にも愛着を形成することがある。
4 歩行開始期頃、子どもは分離不安を示して泣く。
5 乳児期に手がかからない子どもの方が、その後の集団適応がよいということはない。
問5 次の文は、ことばの発達についての記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 1歳後半から2歳にかけて急激な言語発達が起こるのは、象徴機能が形成されてくるからである。
2 語彙を獲得していく過程では、自分で発語はできないが他人のことばの意味がわかる時期や、模倣の時期、そして理解している語を発語する時期がある。
3 文法をごく短い期間に覚えるのは、白紙の状況で生まれた後に普遍文法と呼ばれる豊かな言語環境の中におかれるからである。
4 はじめは行動を自分のことばでは調整できないが、3歳頃から自分のことばで調整できるようになる。
5 幼児は社会的場面でことばがどのように用いられるかの知識を獲得していき、話相手によって自分の会話の仕方を変えている。
問6 次の文は、幼児期の運動機能の発達についての記述である。適切な記述を一つ選びなさい。
1 体位の発達は顕著であるが、脳神経の発達はゆっくりと発達し、10歳頃に大人とほぼ同じ脳重量になる。
2 全身運動機能の発達に比べて、手先の動作などの微細な運動はゆっくりと発達する。
3 運動機能と認知機能は独立に発達するが、児童期になると相互に作用しあって発達するようになる。
4 運動能力がまだ発達していないので、多くの種類の運動をするよりも、特定の運動を集中的に行うことが筋肉への負担から考えて必要である。
5 3歳をすぎると、いろいろな全身運動が迅速かつ巧みにできるようになる。
問7 次の文は、幼児の認知の発達についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A ふりなどの象徴的行動は、イメージを浮かべられるなどの幼児期になって発達する表象作用が前提となる。
B 自己と他者を区別し、その他者が知っていることの内容を推測できる能力は、幼児期に形成される。
C 幼児期には、知覚的印象だけではなく、論理的にものごとを考える。
D 見立て遊びができるようになるのは、意味するものと意味されるものとを分化してとらえることができるようになったことのあらわれである。
A B C D
1 × × ○ ○
2 ○ ○ ○ ×
3 ○ ○ × ○
4 ○ × ○ ×
5 × ○ × ○
問8 次の文は、青年期の記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
1 青年期のはじまりは、第二次性徴の発現を指標にしている。この変化は個人差が大きいことと社会的影響を受けることが特徴である
2 エリクソン(Erikson,E.H.)は、青年期の心理社会的危機を「アイデンティティの確立対拡散」としている。
3 青年期に形成したアイデンティティは、その後の発達過程では変化することがない。
4 アイデンティティの形成過程における地位として、マーシア(Marcia,J.)はアイデンティティ達成、権威受容(早期完了)、モラトリアム、アイデンティティ拡散の4類型を示している。
5 職業的自己概念は、アイデンティティ形成における重要な変数であり、成人期を通して達するものと考えられる。
問9 発達のつまずきには、さまざまな要因が絡んでおり、柔軟な対応が必要である。次の文のうち、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 乳幼児期の発達のつまずきは、一時的に生じることもあるので、長い目でみることも重要である。
B 乳幼児は立ち直る力が弱く、個人差もとぼしいので、トラブルがあったときは慎重に対処する必要がある。
C 発達の順序と経路は一つであるので、発達のつまずきを予防するためには、個々の子どもの発達が目安から逸脱していないかを細かく留意する。
D 発達のつまずきは、本人の問題だけでなく、世代間連鎖のように関係の中で生じることもある。
E 発達のつまずきの対応において、保育者集団の力量にあまる場合は、専門家のネットワークを活用することも大切である。
A B C D E
1 ○ × × ○ ○
2 × ○ ○ × ×
3 ○ × ○ ○ ×
4 × ○ ○ ○ ×
5 ○ × × × ○
問10 「保育所保育指針」第2章子どもの発達、1子どもと大人との関係に「大人と子どもの相互作用が十分に行われることによって、将来に向けての望ましい発育・発達を続け、人間として必要な事柄を身につけるこ とができる。」とある。そのためにはどのような配慮が必要か。次の文のうち適切な記述を一つ選びなさい。
1 大人との相互作用によって情緒的に安定し、大人の期待に自ら応えようという気持ちが育ち、次第に大人の言うとおりに従って活動する依存性が育つようになる。
2 人への信頼感と自己の主体性を形成することであり、それは大人が保護・世話などの活動を大人から子どもへと一方向に与えていくことによって形成される。
3 大人との相互作用によって情緒的に安定することで、主体的に活動するようになり、周囲の人に対して関心を持つようになる。
4 子どもは、大人によって生命を守られ、愛され、信頼されることによって、大人に気に入られるような依存的な行動を常にとるようになる。
5 大人の方が人生経験も豊かで、正しい判断ができるので、子どもはまず大人の言うことを絶対的に聞くようにしつけをすることが大切である。
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