お気に入りのぬいぐるみやタオル、毛布などをおうちから持ってくる子はいませんか?
低年齢のクラスや、お母さんが妊娠中の場合などによく見られるのではないでしょうか。
子どもたちにとって手放せないぬいぐるみや毛布は「移行対象」と呼ばれ、成長過程で大切な存在なんです。
今回は「移行対象」についてお話します。
移行対象ってなに?
イギリスの小児科であり精神分析家 ドナルド・ウィニコットによると、子どもたちが肌身離さず持ち歩いているぬいぐるみや毛布は「移行対象」といいます。
移行対象は母子分離の課題が出てくる頃に登場し、分離不安に対する防衛手段と考えられています。つまり、お母さんと離れることへの不安な気持ちをなんとか安定させるために、ぬいぐるみや毛布を肌身離さず持ちたがるということです。
子どもにとって移行対象の形はかわります。ガーゼや毛皮、お母さんのエプロンなどさまざまです。柔らかくて肌触りがよく、頬ずりをすると気持ちが良いものを移行対象とする子どもが多いようです。
子どもは移行対象を抱きしめたり顔を埋めたりすることで、お母さんに抱っこされているような気持ちになります。
通常、子どもが4歳くらいになると移行対象を卒業する時がやってきます。おもちゃ箱に入れたままいつのまにか忘れ去られてしまったり、「ばいばい」と言って自分でゴミ箱に捨てたというエピソードも。お別れの仕方もさまざまのようです。
保育者はどう対応する?
保育園にお気に入りのぬいぐるみや毛布を持ってくる子がいたら、叱ったり無理やり奪ったりせず、落ち着くまで様子を見守りましょう。
また、その子が興味のある遊びを提案するなどして、保育園にいる時は移行対象のことをいったん忘れ、楽しい気持ちになれるよう保育を工夫していきたいですね。
しかし、どうしても気持ちが不安定になってしまい、活動に参加できなかったり、ずっと泣き止まないこともあると思います。
保育者はできるだけ個別で関わるようにし、その子の気持ちが落ち着くまで寄り添うようにしましょう。
体調が悪いときや、家庭で悲しいことがあったとき、お母さんの妊娠中や下の子が生まれたばかりの時にも、一時的に移行対象を求めることがあります。
4歳や5歳であっても、そのような姿が見られる場合があります。
「お姉ちゃん・お兄ちゃんなのに」とは言わず、その子の甘えたい気持ちを受容し、必要に応じて抱っこしたり、添い寝をして気持ちが安定するように見守っていくことが大切です。
また、園と家庭の連携も大切です。それぞれの様子を共有し、園でできること・家庭でできることを一緒に考えていけるとよいですね。
いずれにせよ、移行対象から離れられないからと言って、大急ぎで何かをする必要はありません。
「いつかきっと、離れられるときがくる」と考え、その子の心の変化を観察し、できるサポートがないか見つけていきましょう。
(公開日:2019年09月12日)
(更新日:2025年01月30日)
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佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |