厚労省の発表によると「不慮の事故」は乳幼児の死因の上位になっています。年齢(月齢)ごとに起こりやすい事故は異なり、保育現場でもクラスごとに事故防止対策を行う必要があります。ここでは、乳幼児期に起こりやすい事故やケガについてお話します。
年齢別・起こりやすい事故やケガ
◇0歳
ミルクや沐浴の熱湯によるやけど、吐乳による窒息、睡眠時の窒息、抱っこ時の落下、誤飲、衣服の紐による窒息、家具や階段からの転落、家具や玩具の角に体をぶつけた時の打撲や切り傷、指挟み 等
◇1歳〜2歳
指挟み、暖房器具等によるやけど、階段やベランダからの転落、店頭、歯ブラシやフォークが喉に突き刺さる、誤飲(特に薬や洗剤に注意)、屋外での転倒や転落、食べ物による窒息、交通事故 等
◇3歳〜
水辺やお風呂での溺れ、屋外での転倒や転落、遊具によるケガ、食べ物による窒息、交通事故 等
事故やケガを防ぐためにどうすれば良い?
好奇心旺盛な子どもたちは、時に保育者が予想しない行動をします。年齢を重ねるごとに行動範囲や興味の対象も広がり、危険なものに触ってしまったり、危ない場所に足を踏み入れてしまう可能性も。保育現場ではどのような対策をすべきでしょうか。
・危険な場所に子どもが入らない対策を
洗剤や火器などがしまってある倉庫や、職員の私物があるロッカールームなど子どもたちが入らないように施錠をしておきましょう。乳児クラスではドアや階段の前にベビー用の柵を設置するのも有効です。
公園など園外の活動場所は予め下見を行い、事故が起こりそうな場所を予測する必要があります。遊ぶ前には、入ってはいけない場所を子どもたちと約束したり、職員が近くに立って安全を確保します。
・保育環境が変化する可能性も。こまめにチェック
子どもの安全に配慮して環境を整えたつもりが、窓から入ってきた風によって棚の上のビニール袋が舞い、布団で眠っている赤ちゃんの顔の上に落ちてしまった……というヒヤリ・ハットがあったそうです。活動後に保育者がしまったはずのハサミを、子どもがもう一度使いたくて自分で引き出しを開ける可能性もありますね。
一度整えた環境であっても変わる可能性があるということを踏まえ、こまめにチェックすることが大切です。
禁止ばかりでなく子どもの育ちにも目を向ける
事故やケガを起こさないための対策は子どもの命を預かる上で何よりも大切なことですが、安全を優先してばかりでは子どもたちの心と体は育たないでしょう。
例えば、散歩先の公園で遊具からの転落事故を防ぐために、滑り台の使用を禁止するかどうかという議論が起こったとします。
絶対にケガをさせたくないと考える新人の先生は使用禁止を主張しましたが、リーダーの先生は「保育者の人数に余裕がある時は1名が必ず滑り台のところについているようにしよう。子どもたちは園庭にはない遊具で遊ぶことに特別感を持っているから、できるだけ遊ばせてあげたい。滑り台での遊びから学べるルールもある」と主張しました。
この話し合いの結果、引率の保育者が3名以上いる場合は滑り台で遊べる公園に行き、3名未満の場合は公園には行かず園庭で遊ぶことにしようと決まりました。
安全対策の方針は園によって様々ですが、このように保育者同士が意見を交わし合い共通認識を持って保育に臨むことで、子どもたちの安全を守りながらも育ちに繋げることができるのではないでしょうか。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |