乳児期の子どもたちは、お母さんやお父さん、保育者など身近な大人と愛着関係を結びながら成長していきます。
1対1の関わりは特に乳児期の子どもにとって大切であると考えられていますが、成長に伴いコミュニケーションの質は変化していきます。
今回は乳児とのコミュニケーションにおける「二項関係」と「三項関係」について説明します。
二項関係とは
自分と大人(お父さん、お母さん、先生等)、自分と玩具、といったように、ある特定の対象と1対1で関係を結んでいる状態を「二項関係」といいます。
泣くと抱っこしてもらう、目が合ってにこっと笑う。
手に握ったガラガラのおもちゃをじっと見つめる、ぬいぐるみに触れて遊ぶ。
これらは全て「二項関係」であり、子どもと特定の対象の1対1の世界になっています。
保育において特定の保育者と1対1で関わることは、基本的信頼感の芽生えにも繋がる大切な経験。「この人と一緒にいて安心できる」「自分は愛され守られている」と感じるために必要なことです。
また、この時期の乳児におもちゃを手渡しても、「自分・もの・大人」の世界ではなくまだ「自分・おもちゃ」もしくは「自分・大人」の1対1の二項関係。三者の関係に意識を向けられるようになるのは、もう少し先になります。
三項関係とは
生後9ヶ月くらいを迎えると子どもは「あっあっ」などと声を出しながら指差しの動作をするようになります。目の前を走っている車を見つけた時や、絵本の中に好きな動物が出てきた時などです。
大人が「見てごらん、車が来たよ」と声をかければそちらに目線をやってニコっと笑うこともあるでしょう。
この頃から子どもは「自分・もの・大人」の「三項関係」でコミュニケーションを取ることができるようになってくるのです。
目の前を走っている車を見てニコっと笑った後、大人のほうにも視線を送りニコっとしたり「あっ」と声をあげる姿も見られます。これは、大人と自分が同じものを見ていると認識している状態で「共同注意」といいます。「先生も僕と同じ車を見てくれてるよね」といったように、特定のものと特定の人の両方に意識が向いているのです。
二項関係から三項関係の発達の流れの大切さ
子どもたちが成長に伴い二項関係、三項関係を結んでいくことは、言葉の獲得や友達とのコミュニケーションを行う上でも大切な基礎となります。
また、二項関係がしっかりと結べないと、次のステップである三項関係を結ぶことは難しく、保育者はこの移り変わりを注意して観察していくべきでしょう。
子どもたちの周りにはスマホやテレビ、絵本や玩具など興味を広げる対象がたくさんありますが、ただ与えるだけではコミュニケーションは一方通行です。信頼できる大人が寄り添い、気持ちに共感したり同じ目線で遊ぶことで二項関係から三項関係へとコミュニケーションの質が変化していきます。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |