食事は単に栄養を摂取することだけが目的ではありません。食卓でコミュニケーションが生まれたり、旬の食べ物を口にすることで季節に親しんだり、時には食材や命に興味を持つきっかけを作る学びの場にもなります。
子どもたちが食に興味を持ち、食べることが好きになるためにどのような工夫ができるでしょうか。保育現場で実践されている事例を紹介します。
好きなものを好きなだけ、「バイキングスタイル」
A園の幼児クラスでは、年に数回一度バイキングスタイルの給食を取り入れています。好きなものを好きなだけ皿に盛り付けて良いというルールで、子どもたちが自分で量や食べたいものを考えながら食事を取りにいきます。
子どもたちの間では「お腹いっぱいになっちゃうからハンバーグは1個」や「みんなが好きなぶどうは取りすぎちゃダメなんだよ」という会話も。自分が食べられる量やお友達のことを考える機会にもなっているようです。
天気の良い日は園庭に机を並べて「ピクニックランチ」
戸外で食事をするピクニックスタイルの給食を取り入れているB園。太陽の光や風を感じながらの食事は気持ちが良いものです。どうしても室内遊びが多くなる雨季に晴れ間を狙って開催することもあるそうです。特別感のあるランチタイムは子どもたちにとってもお楽しみ。普段は食が細い子も、ピクニックの日は残さず食べる姿が見られます。
作っているところを見る「給食室見学ツアー」
普段食べている給食はどんな風に作られているんだろう?その秘密を探るため給食室見学ツアーを行ったC園。調理スタッフが魚を捌いているところや大きな鍋をかき混ぜてスープを作っているところを実際に見て「すごい!」と歓声を上げる子もいました。
「いただきます」「ごちそうさま」という言葉の意味や、作ってくれた人へ感謝の気持ちを大切にする機会にもなるはず。
シェフ監修の特別メニュー「レストランの日」
D園では七夕やクリスマス、ひなまつりなどの行事の日に合わせてレストランのシェフが監修した特別メニューを提供しています。食器も陶器製のものを使い、テーブルにはクロスを敷いてまるで本当のレストランのようです。この日ばかりは子どもたちも少しだけ背筋が伸びている様子。講師を呼んでテーブルマナーを教わることもあるのだとか。
いつもとは一味違う本格的なランチタイムも食育の一環です。
お気に入りの食器を持参する「おうちみたいな食卓」
「家庭的で安心できる食卓」を目指しているE園では、子どもたちが家庭で使っているお気に入りの食器を給食用に持参してもらうスタイルを取り入れています。愛着のある茶碗や箸を使うことで、食に対する興味を膨らませることが目的です。
また、自分の食器を使うことで、正しい持ち方や扱い方に関しても意欲的に学ぶことができます。
園の数だけ色々な工夫がある
ユニークな5つの事例を紹介しました。
園の環境や方針ごとに、様々な工夫の仕方があって面白いですね。
ぜひ保育者のみなさんも子どもたちと同じ目線になって食事の時間を楽しんでください。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |