ヒヤリハットとは「危ないことが起こったが、幸い被害には至らなかった事象のこと」と厚生労働省によって定義されています。2020年度に厚生労働省が発表した保育施設の事故報告件数は1568件。決して少ない数ではなく、どの園で事故が起こってもおかしくありません。
安全な保育環境づくりに役立つよう、保育現場で起こりやすいヒヤリハットについてまとめました。
転落・転倒
階段やベランダからの転落に注意しましょう。ダンボールや収納ボックスなどを踏み台にして高所から転落する事故もあります。また、屋外の階段や遊具等からの転落・転倒にも要注意です。
誤飲
小さなおもちゃや制作物のパーツなどの誤飲に注意しましょう。特に乳児クラスでは誤飲が起こりやすく、環境整備が重要です。トイレットペーパーの芯をくぐる大きさのものであれば子どもは飲み込めてしまいます。
薬剤やタバコを誤飲した場合も要注意。日本中毒情報センターの中毒110番(電話029-852-9999)に電話をすると適切な対処方法を教えてくれます。
水の事故
プールや川、海など水辺の事故にも気をつけましょう。ふと目を話した瞬間に子どもが溺れたり転落するケースもあります。人数確認を怠らず、十分な人数の職員配置を行うことが大切です。また、川や海へ散歩へ行く場合はライフジャケットを着用することで命を守ることができます。
そして、園内の沐浴槽に湯を張ったままにすることも事故の原因となります。使っていない時は湯を抜きましょう。
食物アレルギー
食物アレルギーによる死亡事故も起こっています。アレルギーのある子どもに配膳をする時は職員がダブルチェックを行い、職員全員でアレルギーに関する情報を共有しましょう。
子ども同士で食べ物を分け与えてしまうケースもあります。食事の時間は職員が必ず近くで注意して見守るようにしましょう。
やけど
暖房器具やクッキング中の事故が報告されています。ホットカーペットや床暖房を導入している園では低温やけどにも気をつけてください。
また、冬に園庭で焼き芋を作っている時に火の粉でやけどをしたという事例もあります。特に普段と違う環境や行事の時に事故は起こりやすいものです。予測できる危険に関してはあらかじめ対策を検討することが大切です。
衝突
子どもは大人よりも視野が狭いため物や人に衝突しやすい傾向があります。日頃から子どもたちと約束をしたり、環境整備を行うようにしましょう。走ってきた子ども同士がぶつかったり、机や家具に誤って衝突するといったような事故は保育現場で最も起こりやすいと言えます。
睡眠中の窒息
睡眠中の窒息は命に関わります。特に乳児クラスではこまめな呼吸確認が大切です。
うつぶせ寝になっていないか、顔に寝具がかかっていないか、鼻が詰まって苦しそうではないか、吐いた物を飲み込んでいないかなど、一人ひとりの顔を見ながらチェックします。
最近は子どもの呼吸を検知して記録する便利なIoTも導入されています。そういったツールを使用する場合は、誤作動の可能性もあるため頼りきりにならないように気をつけましょう。あくまでもダブルチェックの道具です。
交通事故
園外に出る場合は交通事故に気をつける必要があります。歩道を歩く大切さや飛び出しの危険性、信号のルールなどを出発前に子どもと確認することも事故予防になります。
交通事故というと自動車の事故をイメージしますが、電車にも気をつけましょう。走ってくる電車を見たくて線路内に立ち入ってしまったというヒヤリハットもあります。また、電車に乗って出かける場合はホームからの転落にも注意しましょう。
不審者
不審者による声掛けや連れ去りにも注意しなくてはいけません。不審人物が近づいてきた場合、保育者同士で連携を図り安全を確保しましょう。最寄りの交番や警察署の場所を確認しておき、場合によっては通報してSOSを発することも必要です。園内に不審者を入れないよう、防犯カメラやモニターも活用しましょう。
不審者による事件は保育者の目だけでは防ぎきれない可能性もあるので、地域全体で子どもを守る意識も必要です。日頃から地域の人々に挨拶を行うなどして、より多くの大人の目で地域の子どもたちを守りましょう。
事故予防は入念な再確認が大切
取り返しのつかない事故が起こらないように、職員全員が共通認識を持つと同時に子どもたちにも約束事を伝えていきましょう。
特に新年度や連休明けのタイミングは事故が起こりやすいと言われています。普段から十分に注意している場合であっても、ぜひ再確認してみてくださいね。
参考:
内閣府 教育・保育に関する報告・データベース
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/data/index.html
厚生労働省 安心・安全な保育のために
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/hoiku/index.html
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |