保育業界の常識は、時代と共に変化します。10年前や20年前に当たり前だったことが、現在では「やってはいけないこと」「やらないほうがよいこと」になっている可能性も。
今回は、保育現場で活躍中の保育士の方たちのお話を参考に、昔はOKだったけど今はNGな保育についてご紹介します。
人に見える場所で排泄や着替えの援助をする
「オムツ替えや着替えなど、以前はあまり場所を気にせず行っていました。近年は子どもたちのプライバシーを守るために、ついたてなどを設けて他の人に見られないように配慮しています。当初、園内では『そこまでやる必要あるの?』という疑問の声もありました。しかしこのやり方になってからは、子どもたちも以前より落ち着いて排泄や着替えができているように感じます」(認可保育園 保育士 O先生)
性別による子どものカテゴライズ
「女の子は女の子らしく、男の子は男の子らしく、という考え方は今の時代には合っていないとされています。男性、女性ではなく、子どもたち1人ひとりの姿を尊重していくことが大切であると職員研修でも勉強しました。プリンセスのドレスを着たい男の子も、車や電車が大好きな女の子もいます。昔はそれが当たり前ではありませんでした。私たちは性に関する固定観念を子どもたち、そして保護者にも押し付けず保育に臨むことが求められています」(認可保育園 主任保育士 M先生)
名札や誕生日表を見える場所に出す
「園によってやり方は様々かもしれませんが、私の働いている園では、子どもの名前をオープンな場所に出さないように気をつけています。以前は『名前は目立つ場所に大きく書いてください』と保護者にもお願いしていたのですが、かばんや靴の見える場所に名前が書かれていて、そこから犯罪に繋がる可能性もあります。そのため、名前はなるべく見えない場所に書くように変更になりました。また、クラスの誕生日表も誰もが見える場所を避け、窓から見えない場所を選んで掲示しています」(小規模認可保育所 主任 K先生)
保護者と保育者の個人的な交流
「私が新人だった20年ほど前は、保育士と保護者が仲良くなって連絡先を交換し、家族ぐるみのお付き合い……なんていうことも珍しくありませんでした。しかし、現在は保護者と保育者が個人的に交流することは原則的に禁止と職場で言われています。私たちは守秘義務があるし、公私混同して業務に支障が出るためです。年賀状のやりとりも保育者個人の住所ではなく、園の住所で出しています」(認可保育園 保育士 G先生)
園の出入り口を開けたままにすること
「地域に開かれた園にしたいという思いがある一方、防犯のためにセキュリティにはかなり慎重になっています。本当は地域の親子が気兼ねなく訪れる保育園でありたいのですが……。昔と違い、それが難しい世の中になりました。子どもの命を守ることが第一なので、園の出入り口は常に施錠し、お迎えの際も必ずカメラで保護者の顔をチェックしてから解錠しています」
(小規模認可保育所 園長 H先生)
立ち止まり、振り返ることが大切
保育は正解のない世界である、という言葉をよく耳にします。
普段は保育所保育指針や各施設ごとに決められたルールに則って保育をしていると思いますが、「本当にこのやり方は子どものためになっているのか?」「昔からの慣習でやっているけど、本当に安全?必要?」と立ち止まって考え、これまでの当たり前に対して疑問を持つのはとても大切なことです。
疑問が生まれたときには、職員間で対等に意見交換を行えるように職場の風土づくりをしましょう。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |