近年増えている「送迎保育ステーション」をご存知でしょうか。
送迎保育ステーションは、保護者の代わりに子どもたちをバスで園に送迎するという取り組みです。
ここでは、送迎保育ステーションの特徴や課題、保育者として注意したいことなどについて解説していきます。
送迎保育ステーションとは?
送迎保育ステーションとは、待機児童問題解消に向けてスタートした事業の1つです。ステーションは主に駅前などに設置され、自治体が運営しています。送迎保育ステーションの職員が、保護者に代わり園児を専用バスで保育園へ送迎するほか、登園前や降園後に一時預かりも行っています。
朝、保護者は送迎保育ステーションに子どもを連れていきます。子どもたちは登園のバスが出発するまで送迎保育ステーションで過ごし、保育終了後には、再びバスに乗ってステーションに戻り、保護者の帰りを待ちます。事業内容は自治体により多少の差異があります。
送迎保育ステーションを利用することで、子どもたちは郊外にある保育園にも通いやすくなります。そのため駅前など利便性が高い場所にある保育園に入園希望者が殺到することを防ぎ、待機児童問題解消につながると考えられています。また、立地優先で園を選ばなくてもよいので、入園先の選択肢も広がります。
さらに、保育園の立地や開所時間等の都合により保護者の希望通りの就労が難しい、もしくは負担が大きいといった課題の解決策としても有効です。
送迎保育ステーションの課題は? 保育者の注意点
送迎保育ステーションを利用すると、保護者が直接保育園に行く機会は減ります。そのため、園と保護者のコミュニケーション不足解消が課題となっています。
もちろん、送迎保育ステーションの職員を介して情報共有をしたり、連絡帳やアプリを活用してやりとりをすることは可能です。しかし、顔の見えないやりとりになるため、不安を覚える保護者もいるでしょう。
保育園の職員は必要に応じて各家庭に電話で連絡を入れたり、日々の様子を丁寧に連絡帳に綴るなどコミュニケーションの工夫が求められます。
保育ステーションの職員もまた、家庭と園、両者の情報を正確に伝えていく必要があります。
送迎保育ステーションの保育士になるには? 求人はある?
保育園ほど数は多くありませんが、送迎保育ステーションの求人も増えています。一般的には自治体が民間事業者に運営を委託しているため、運営母体は様々です。保育園とは異なり開所時間が朝と夕方に限られているため、正職員よりもパートタイマーの募集が多い傾向にあります。
送迎保育ステーションの保育士になると、様々な園に通う子どもたちと関わることができ、異年齢合同保育の経験を積めるといった良さがあります。また、バスに乗って地域の園に足を運び、保育の見識が広がったという声も。そして何より、保護者の仕事と育児をダイレクトにサポートするやりがいの多い仕事といえます。
送迎保育ステーションは今後も変わりゆく可能性
送迎保育ステーションは、現在広まりつつある制度。まだ知名度が低く、社会的にもっと知られることで導入する自治体も増えていくだろうと予想されます。今後、社会のニーズに合わせて事業内容も変わっていく可能性があります。送迎保育ステーションに関わる保育者は、柔軟な視点と共に取り組みについて理解を深め、多様な家庭に寄り添っていくことが重要ではないでしょうか。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |