保育の仕事をする中で、保護者からクレームを受けることもあります。予期せぬクレームにショックを受けるかもしれませんが、動揺せず丁寧に対応することが重要です。
ここでは、保育者が保護者からクレームを受けたときの適切な対応について紹介します。
保護者からのクレーム例
保護者からのクレームの例をいくつか紹介します。
(実際に保育現場で発生した事例をもとに、個人情報が特定されないように編集しています)
- 帰宅後に怪我を見つけた。何も報告がなかったのに……。
- 先生に挨拶をしたのに無視された。笑顔がなく無愛想。
- 早番の先生に伝えたことが、担任の先生には伝わっていない。
- 名前を書いているのに持ち物がよくなくなる。
- 先生の保育の仕方が不適切に感じる。
保護者からのクレームで特に多いのは、伝達ミスや怪我や体調に関わること、持ち物の管理に関することや保育者自身の振る舞いについてなどです。
クレームへの対応方法
実際に保護者からクレームを受けた場合はどのように対応したらよいでしょうか。手順の例を紹介します。
- 相手の話をよく聞く。どのようなことに対して不満があるのか聴き出し、情報を整理する。怒りや悲しみ、不安など相手の気持ちに寄り添うことが大切。
- 謝罪をする。不快にさせてしまったことに対し、誠意を持って謝る。
- 上司に報告をする。事実確認をする。
- 解決策を考える。職員全体で共有し、再発防止に努める。
- 保護者に改めてお詫びをし、解決策や今後の方針について提案する。
(認めていただけない場合は再び4を実施)
クレーム対応の際の注意点
一人で判断せず、上司に相談すること
クレームを受けたときに施設長など上司に相談するのは最も大切なことです。「自分のミスで受けたクレームだから……」などと一人で抱え込むのはNGです。再発防止のためにも責任者の判断と行動は必要不可欠です。職員間で共有することによって園全体の業務改善にも繋がります。
反論したり、怒りの感情を出さないこと
クレームの中には理不尽な内容もあるかもしれません。また、自分以外の職員のミスで責められる可能性も。
そんなときに怒りの感情をあらわにしたり、「私のせいじゃないのに」という態度を出すのは禁物です。怒りのぶつけ合いをしても事態は良い方向に進みません。まずは、相手が何に対して不満を持っているのか丁寧に聞き取りを行い、誠意ある対応を心掛けましょう。
クレームを未然に防ぐためにできることは?
クレームの中には、事前に防げたというものも少なくありません。何がクレームの原因になったのかをもとに、解決策を園全体で考えていくことが大切です。
以下は、クレーム予防のために日頃から保育現場でできることの一例です。
- 子どもたちだけでなく保護者にも目を配り、明るく挨拶をする習慣をつけること。
- 職員間で伝達ミスを防ぐために、メモを取ったり複数の職員でチェックする癖をつける。
- オムツ替えや着替えの際は子どもの身体の状況をチェックする。異常があれば職員間で共有・確認を行う。
- 持ち物の紛失や入れ違いを防ぐために収納を工夫する。できるだけ分かりやすく記名してもらうよう保護者にも呼び掛けを。
- 日頃から保護者と密にコミュニケーションをする。事務的な報告だけでなく、保育者が教育的な意図を持ってアプローチしていることを、連絡帳や園のブログなどの情報媒体を活用して知ってもらう。
クレームを次に活かそう
言い間違いや物忘れといったヒューマンエラーは誰にでも起こることです。クレームを受けると自分の能力を否定されたような気持ちになってしまうかもしれませんが、クレームは改善点を見つけるチャンスでもあります。問題に対して真摯に向き合い、再発防止に努めることが重要です。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |