保育業界や教育業界では人手不足が課題となっています。「募集をしてもなかなか人が来てくれない」「マンパワーが足りず保育の質が下がってしまう」など、悩みを抱えている園は少なくないようです。
ここでは、現役の園長や人事担当者、経営者の話をもとに、採用に関するアイデアを紹介します。
働き方は応相談。柔軟な働き方を認める
私立認定こども園 人事部 Aさん
「時短勤務やフレックス制、リモートワークなど幅広い働き方を取り入れたところ、たくさんの人が応募してくれるようになりました。特に育児中や介護中の方などは、フルタイムで働くことが難しい場合が多いです。面接のときに『あなたはどんな風に働きたいですか』と必ず聞くようにし、その人に合った働き方を一緒に考えていきます。弊社と契約している方の中には、運動会や発表会の行事の時のみヘルプスタッフで来てくれる方もいるんですよ。もし、働く日数や時間を増やしたくなったらいつでも歓迎します、とも伝えています」
求職者向けのイベントを実施
小規模保育施設経営 Bさん
「当園はマンション内にある小さな保育園です。そのため、関係者以外が気軽に立ち寄ることが難しく、外から見ても雰囲気が伝わりにくいことが課題点でした。そこで、園のことを知ってもらうために求職者向けのイベントを定期的に実施することに。実際に施設内に入ってもらい、保育室の雰囲気を味わってもらったり、給食を食べてもらったりします。職員と合同で研修に参加してもらったこともあります。どんな企画にしたら園の魅力が伝わるだろうかと試行錯誤しながら今後もやっていくつもりです」
月に2〜3本、園の日常が伝わる動画を投稿
認可保育園 C園長
「コロナ禍の頃から、園の子どもたちに向けた動画投稿を行っていたのですが、それを見て応募してくれる保育者が増えました。歌や手遊び、行事の様子など園の日常を簡単に編集してアップしているのですが『職員がみんな楽しそうで、ここで働いてみたいと思った』『園舎が綺麗で魅力的だった』など、動画を見て魅力を感じてくれたようで嬉しいです。現在、月に2〜3本の頻度で動画をアップしています。撮影と編集が得意なスタッフが中心となり、みんなで楽しく制作しています」
体験保育を実施してミスマッチを防ぐ
私立幼稚園理事長 D先生
「せっかく就職してくれても、自分に合っていなかったという理由で退職する人が少なくありませんでした。そこで、就職後のミスマッチを防ぐために、3日間の体験保育の機会を取り入れることにしました。書類選考で合格した人が採用面接に進む前に、実際に現場に入り教諭たちの指導を見学してもらうという内容です。これは採用試験ではなく、この幼稚園の教育が自身の価値観やスキルに合っているかを確認してもらう機会として設けています。学生時代にやった観察実習をイメージしていただけると伝わりやすいかもしれません」
採用活動はトライアンドエラー
ここで紹介した以外にも、保育関連の資格取得補助制度を取り入れている園や、保育学生を積極的にアルバイトスタッフとして雇い入れている園などがありました。各園で様々な工夫をしているようです。
お話を聞いた方々に共通することは「トライアンドエラーも楽しんでいる」ということでした。1つの方法がうまくいかなくても、また次の方法を試し、前向きに採用活動をしているようです。
ユニークなアイデアがあれば、園や会社内で共有してみることもおすすめです。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |