絵カードは子どもの理解やコミュニケーションを助けるツールです。
保育に絵カードを取り入れることで、見通しをもつことや気持ちの切り替えが苦手な子が、落ち着いて活動に臨むことができたり、気持ちを切り替えて次の活動に移行できるようになります。
ここでは、絵カードの活用方法や活用するときのポイントについてお伝えします。
絵カードとは
絵カードとは「行動」や「もの」「気持ち」などをイラストと短い言葉で示したカードのことです。療育の現場で使われることが多く、特に自閉症の傾向がある子の支援に役立っています。
子ども自身が絵カードで自分の意思を伝えたり、保育者が絵カードで指示を出したりといった使い方をします。言葉でのコミュニケーションが苦手な子や、見通しを持ったり想像をすることが苦手な子、覚えるのが苦手な子、気持ちの切り替えが難しい子とのやり取りの中で活用することで、情報がスムーズに伝わるようになり、子どものストレスや不安感をやわらげることができます。
絵カードの活用方法の例
- 1日の活動の流れや順番を伝える
- 今の気持ちや、やりたいことを伝える
- 物事のルールやマナーを伝える
- ものをしまう場所を示す
- 残り時間を伝える
- 持ち物や準備物を知らせる
活用するときのポイント
⒈子どもが理解しやすいつくりにする
1つの絵カードに複数の要素が入っていると子どもは混乱してしまう可能性があります。
例えば、はみがきのときの準備物を伝える場合、1つの絵カードの中に「はみがき・コップ・タオル」が描かれているよりも「はみがき」「コップ」「タオル」と1つの絵カードに1つの要素が描かれていたほうが理解がしやすいです。
また、両面印刷の絵カードはどちらを使えばよいか判断が難しいため、片面のみのつくりにしましょう。
⒉ラミネート加工で強度をあげる
保育の中で絵カードを使うと、汚れたり濡れたりして紙が劣化してしまいます。自閉症の傾向がある子は物事の変化に対応することが苦手です。折れたり汚れたりしてカードの見た目が変わってしまうことで、理解が難しくなってしまったり、不安感を抱く可能性があります。
こういったことを防ぐために、劣化防止のラミネート加工をすることをおすすめします。同じ絵カードを長く使い続けましょう。
⒊たくさん褒める
絵カードを使ったコミュニケーションや理解が成功したら「そうだよ、よく分かったね!」「すごいね」とたくさん褒めましょう。保育者に褒められることで、子どもたちは嬉しくなり、「次も同じようにやってみようかな」という意欲が芽生えます。実践と褒めることを繰り返すことで、少しずつ理解が進み、コミュニケーションの力が育っていきます。
⒋絵カードと言葉掛け、動作はセット
絵カードを使うときは黙って提示するのではなく、言葉掛けや動作とセットにしましょう。例えば、「ごはんを食べる」であれば、絵カードを見せながら「食べる、だよ」と言葉を掛け、口をぱくぱくする動作も見せましょう。
そうすることで、行動と言葉が結びつき、理解が進んでいきます。
トライアンドエラーで色々な手法を試そう
絵カードを使ってもなかなか効果が見られない場合は、使うタイミングを変えたり、絵カード以外の手法も試してみたり、色々な手法を試してみましょう。
発達障害傾向のある子にフィットする支援方法は一人ひとり異なります。Aくんにフィットした支援がBくんにフィットしないという例は珍しくありません。
他の職員とも意見交換をしながら、よりよい方法を探ってみてください。
佐藤愛美(さとうめぐみ)
保育ライター。保育園や子育て支援施設にて担任や育児講座等の業務を経験。2016年にはフリーライターに転身。保育園の取材記事やコラムなどを中心に執筆し、現在に至る。 保育の仕事の魅力や、現場で活躍する保育者たちの生の声をお届けします。 |